交配試験からみたマツノザイセンチュウとニセマツノザイセンチュウの種内・種間関係

タイトル 交配試験からみたマツノザイセンチュウとニセマツノザイセンチュウの種内・種間関係
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 清原 友也
小坂 肇
相川 拓也
発行年度 1997
背景・ねらい マツノザイセンチュウBursaphelenchus xylophilusは、アカマツ・クロマツに強い病原性を示してマツ材線虫病を引き起こすが、同属のニセマツノザイセンチュウB. mucronatusは、ほとんど病原性を示さないことが知られている(写真1)。普通両種は、雌成虫尾端の小突起の有無(写真1)で識別されるが、尾端形状の種内変異は大きいので、両種の峻別が困難な場合がある。さらに、両種はほとんど同様の生活史を有している。このように形態的・生態的に極めて類似している両種の種内及び種間関係を明らかにするため、両種を世界各地で採集して(表1)種内及び種間の交配試験を行った。
成果の内容・特徴 マツノザイセンチュウ及びニセマツノザイセンチュウにおいて種内交配を行った結果、1組を除いてどの交配組み合わせでもよく増殖した(図1-A、図1-B)。ほとんど増殖しなかった交配組み合わせ(Jx×Cx)の雌雄を逆にした組み合わせ(Cx×Jx)ではよく増殖した。これらから、マツノザイセンチュウは、異なる地域に生息していても生殖的には隔離されていないことが明らかになった。また、ニセマツノザイセンチュウについても同様である。

マツノザイセンチュウとニセマツノザイセンチュウの種間交配を行った結果、種内交配に比べて増殖はよくなかった(図1-C、図1-D)。種間交配のなかでは、フランス産とフィンランド産のニセマツノザイセンチュウを供試した場合、比較的よく増殖する傾向にあった。しかし、それらを用いた一部の種間交配由来の雑種第1世代(F1)の妊性を調べたところ、F1の妊性はないことが明らかになった。これらの結果から、両種は、生殖的に隔離されていると判断した。しかし、すべての交配組み合わせでわずかながらもF1が生じたことから、両種の生殖的隔離は不完全であるといえる。

マツノザイセンチュウとニセマツノザイセンチュウの生殖隔離が不完全であることが明らかになったことから、この種間関係には、「共通な先祖から分化した生殖的隔離が不完全な生物群」を意味する supraspecies の概念を適用するのが妥当と考えた。今後、マツノザイセンチュウ及びニセマツノザイセンチュウにおける種内・種間関係をより明確にするためには、両種の交配試験で比較的よく増殖したフランス産及びフィンランド産のニセマツノザイセンチュウの研究とロシアなど調査の進んでいない地域における両種の探索並びにさらなる交配試験等が必要である。
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