コマユバチ科寄生蜂の分類と生態

タイトル コマユバチ科寄生蜂の分類と生態
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 前藤 薫
発行年度 1997
背景・ねらい 昆虫に寄生し、最後には殺してしまう蜂の仲間を寄生蜂と呼ぶ。寄生蜂は農林業害虫の生息数を抑える天敵として重要であるばかりでなく、森林に生息するさまざまな昆虫類の捕食寄生者として森林生態系の動態に深くかかわっている。しかし、森林生態系における寄生蜂の機能には不明な点が多く、これを解明するにはまず寄生蜂の分類を確立し、寄生生態を明らかにする必要がある。本研究では、森林昆虫の寄生蜂のなかでも特に重要なコマユバチ科について、分類・同定法を確立し、寄生生態を調査するとともに、系統分類学的特性(予測可能性)について検討した。
成果の内容・特徴 コマユバチ科は30以上の亜科からなるが、雌雄生殖器などの形態構造を精査した結果、それらを五つの系統群(亜科群)にまとめることができた(図1)。寄生蜂には、寄主を発育させながらその体内に寄生する飼い殺し寄生者(多くは体内寄生者)と産卵時に寄主を永久麻酔してしまう殺傷寄生者(多くは体外寄生者)がある。コマユバチ科ではコマユバチ亜科群の大部分が殺傷寄生者であり、ほかは飼い殺し寄生者であった。ツヤコマユバチ亜科群とアブラバチ亜科群は、それぞれハエ類とアブラムシ類に特化した寄生蜂であった。コマユバチ亜科群(写真1)とフチガシラコマユバチ亜科群(写真2)はどちらもチョウ・ガ類とコウチュウ類を中心に多様な昆虫類に寄生し、後者では亜科ごとに寄主選択の特殊化が見られた。また、産卵時に寄主体内に毒液とポリドナウイルスを注入して寄主の発育や免疫系を巧妙に制御することが知られるサムライコマユバチ亜科群の寄主は、チョウ・ガ類にほぼ限られていた(写真3)。

フチガシラコマユバチ亜科群のオオハラボソコマユバチ亜科は、チョウ・ガ類及びコウチュウ類の幼虫の飼い殺し寄生者であり、森林昆虫の天敵として特に重要な寄生蜂である。この亜科は従来、雑多な寄主を利用する寄主選択性の曖昧なグループと思われていたが、詳細な系統解析を行ったところ、特異な寄主選択性を持ついくつかの属・種群から構成されることが分かった(図2)。

オオハラボソコマユバチ亜科の他にも、主要な5亜科について分類学的検討を行い、分類群を記載して検索表を作成し、寄生生態を解明した。また、東南アジア地域の寄生蜂も調査し、タイの主要な森林害虫については寄生蜂を同定するための検索表を作成した。

本研究によって得られた成果は、森林害虫の個体群動態と管理手法の研究に活用されるほか、森林における生物間相互作用系の機能と動態の解明に貢献するものと期待される。
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カテゴリ 害虫

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