タイトル | 木材のめり込みに依存した機械的嵌合型の接合部の耐力・変形機構 |
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担当機関 | 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
軽部 正彦 林 知行 原田 真樹 小松 幸平 |
発行年度 | 1997 |
背景・ねらい | 多くの実験結果をもとに、機械的接合は設計マニュアルが整備され、大規模な木造建築物や木造橋の接合部の設計には、ボルトやドリフトピン等の接合具と金物が多用されている。一方、伝統的な建築物では、外観の意匠性や審美性が尊ばれることから、通常、金物による接合ではなく、木材に精緻な加工を施す継手・仕口が用いられている。しかし、その強度性能は金物接合と比べて低いといわれているものの、十分に性能評価されていないのが実情である。そこで本研究では、伝統的な継手・仕口の強度性能に着目し、その性能や限界を探ることを目的に実験的検討を加えることとした。 |
成果の内容・特徴 | 本研究では、伝統的継手の中でも強度が高いといわれる追掛大栓継(図1)と金輪継(図2)を対象に、実大寸法の試験体を作製し破壊試験を行った。試験体は、材せい(H)が100、150、200及び300mmの4種類とし、加力は引張り・曲げ・圧縮の3種類、またそれぞれ試験体数を3体として、合計72体を試験した。材料には集成材を用いて、めち等の基準寸法を断面寸法にかかわらず15mmに統一した。 引張り試験では、母材換算応力(図3)が断面増加に反比例するのに対し、あご部分の圧縮面換算応力(図4)では正比例関係にある。これは強度が圧縮相当面で決定されているためと説明できる。破壊形態からは、基準寸法の15mmが小断面のH=100では大きすぎるため改善する必要がある。 曲げ試験では、最大曲げ応力(図4)は断面増加に反比例しており、込栓やめちほぞ部分の圧壊、その近傍を起点とする割裂が最大強度を決定している。込栓の数やめちほぞの量を増やすことによる強度の改善の可能性が示唆される(図5)。 圧縮試験では、加工部分の座屈で強度が決定するようであるが継手形式によって状況が異なり、金輪継では最大断面欠損部の偏心度合によって強度が変化している。その他、追掛大栓継では込栓の断面欠損による局部圧壊も観察されている(図6)。 以上まとめると、継手加工の基準寸法の15mmは、破壊形態の差に現われたように木材の強度異方性を接合部として上手に使いこなす鍵であり、断面寸法に応じて設定するのが望ましいことが分かった。また、集成材は年輪が積層方向に連続しない点で目廻りを生じないなど割れに対して有利な場合があるが、継手として重要なめちや込栓などが中間層ラミナやフィンガージョイントの近傍にくる場合があるので、接合加工に際しては注意が必要である。この結果をもとに、継手性能の特徴が及ぼす伝統的軸組構造の特質について研究を進める。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
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図表8 | ![]() |
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図表10 | ![]() |
図表11 | ![]() |
図表12 | ![]() |
カテゴリ | 加工 |