希少植物(ヤクタネゴヨウ・シデコブシ)の遺伝的構造と保全対策

タイトル 希少植物(ヤクタネゴヨウ・シデコブシ)の遺伝的構造と保全対策
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 長坂 壽俊
吉丸 博志
金指 あや子
中島 清
島田 健一
河原 孝行
発行年度 1997
背景・ねらい 日本には約5,300種の野生植物が生育しているが、そのうち約6分の1の895種(木本植物では133種)が絶滅の危機にさらされている。これら希少樹種を保全するためには、森林生態系を構成する希少樹種の実態解明及び絶滅の進行を止めるための森林管理技術の開発が求められる。一般に、生物種が小集団化したり隔離分断されると遺伝的変異量が減少し近親交配が加速される。その結果、他殖性で近交弱性の影響を受けやすい多くの樹木では次代の形成が阻害され絶滅に向かう。よって、安定して更新できる集団にするために遺伝的な観点から検討し、現地及び現地外保全のための情報を得る必要がある。
成果の内容・特徴 ヤクタネゴヨウは、個体数の減少や樹勢の衰退等による着花数の減少から十分な受粉ができず稔性の低下が見られる。特に種子島では孤立木が多く自家受粉による多量の不稔種子が生産されていた。屋久島と種子島の両島間及び島内個体間に交配組み合わせによる稔性の違いはないため、集団間の遺伝的分化や集団内への致死遺伝子の蓄積等はさほど顕著ではない。アイソザイム分析でも集団間の遺伝的距離は小さく、近縁分類群とされるタカネゴヨウやカザンマツとは大きく離れていた。下層植生の繁茂等により稚樹はほとんど認められなかったが、崩壊跡地など植生が消失した場所では稚樹が更新していた。人工交配により種子の稔性が著しく向上することから(図1)、人為的な交配が種の保全を図る有効な手段と考えられる。屋久島と種子島の集団間で遺伝的分化はほとんどないため、島間移植による増殖が可能になる。できる限り多くの施設での現地外保全を図るとともに、人工造林を積極的に進めることが重要である。

シデコブシは、東濃地方・渥美半島・三重四日市周辺の3地域だけに自然分布する。アイソザイム遺伝子座PGM-1を例にとると五つの対立遺伝子が見られるが、集団の間でその種類や構成が非常に異なった(図2)。東濃地方の比較的広い地域に分布する集団では遺伝子多様度(Hs)が0.124と大きいが、渥美半島では0.076、四日市では0.060とかなり小さかった。近縁種のコブシは北海道から九州まで広く分布するにもかかわらず、シデコブシ全体の遺伝子多様度と同程度であった。しかし、地域集団間の遺伝子分化度(Gst)についてはコブシの4倍以上もの値を示し、遺伝的分化が大きく進んでいることが明らかになった。シデコブシを保全するためには、各生育地が分断化されつつあるので近交弱性が起こらないようなるべく数多くの個体を残すこと、遺伝的分化が進んでいるため他の地域からの移植を避けそれぞれの生育地の遺伝変異の保全を図ることが必要である。
図表1 212455-1.gif
図表2 212455-2.gif
図表3 212455-3.png
図表4 212455-4.png
カテゴリ 管理技術 受粉

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