木材の香りがもたらす人の快適性増進効果

タイトル 木材の香りがもたらす人の快適性増進効果
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 宮崎 良文
大平 辰朗
松井 直之
発行年度 1997
背景・ねらい 針葉樹は、独特の匂いをもち、さまざまな生物活性を有することが経験的に知られている。しかし、人に対する影響に関する報告は少なく、特に、生理応答に関する実験例は皆無に等しい。本研究の目的は、第1に、ヒノキ、ヒバ、タイワンヒノキ等の各材油が人の主観評価と生理応答に及ぼす影響を明らかにすることである。特に、生理応答については、血圧、脈拍数を1秒毎に連続測定し、自律神経活動の経時的変化に注目した。第2には、主観的に「好き」であると評価した場合と「嫌い」であると評価した場合に関してその生理応答を明らかにすることである。
成果の内容・特徴 被験者は健康な19歳から23歳の13名の女性とし、温度26℃、相対湿度60%、照度20ルックスの人工気候室において、座位にて測定を行った(写真1)。におい刺激としては、ヒノキ、ヒバ、タイワンヒノキの各材油並びに歯科の消毒剤として用いられているオイゲノールとした。測定指標は、連続血圧、連続脈拍数、瞳孔径(写真2)といった自律神経活動指標並びに脳波、脳血流量といった中枢神経活動指標とした。主観評価は印象の評価を目的とするSD法による官能評価を実施した。

その結果、図1に示すように、タイワンヒノキの材油の吸入によって、収縮期血圧が有意に低下することが分かった。また、それらのデータを「好き群(9人)」と「嫌い群(4人)」に分けて図2と図3に示したが、両群とも血圧は有意に低下することが分かった。一方、「好き」であっても「嫌い」であっても共に「自然感」は強く持たれていた。通常の生理応答実験においては、血圧に関しては「好き」な場合は低下し、「嫌い」な場合は上昇することが多い。人はヒトとなって500万年経つが、その間、森は安全、健康、快適性をもたらしてきた。今回の結果は、森由来の素材が本来持っている人への快適性・健康の維持増進効果を反映していると考察される。本実験においては、「嗜好」の違いにかかわらず「自然感」を強く持たれていたことに示されている(図4)。

また、不快であると評価されたオイゲノールの吸入においては瞳孔径が有意に増大しており交感神経活動の高まったストレス状態にあることを示した。さらに、ヒノキ材油の吸入によって脳の活動指標として用いられるα波が顕著に減衰し、脳活動が昂進していることが推察された。

結論として、自然由来の樹木の香りは、主観的に好まれる、あるいは好まれれないにかかわらず、生理的な快適感を増進させることが分かった。

なお、本研究は農林水産技術会議大型別枠研究「新需要創出のための生物機能の開発・利用技術の開発に関する総合研究」による。
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