バイカル湖底泥が明かす過去500万年・森林と砂漠交替の地球史

タイトル バイカル湖底泥が明かす過去500万年・森林と砂漠交替の地球史
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 河室 公康
篠宮 佳樹
志知 幸治
津村 義彦
吉村 研介
吉丸 博志
鳥居 厚志
発行年度 1997
背景・ねらい バイカル湖は中央アジアとシベリアの中間に位置し(図1)、世界最古の内陸淡水湖である。その湖底堆積泥は1千万年を超える地球環境変化の歴史を連続的に記録していると見られている。このバイカル湖底泥の不撹乱柱状試料を採取し(写真1)、堆積年代決定を行うとともに、湖底泥の地質学的、化学的、古生物学的手法による解析から、過去1千万年間の地球環境を再現し、長期地球環境変動モデルの構築に資することを目標とする。
成果の内容・特徴 1996年冬季にバイカル湖のほぼ中央部、水深335mのアカデミシャンリッジで掘削した深さ200mの堆積物柱状試料「BDP96コア」は古地磁気の測定結果から過去500万年間の連続した堆積物であることが明らかにされた。重大な試料欠層が少ないこと、また堆積速度がほぼ一定で4cm/1000年であること、など古環境解析には大変優れた試料であることが判明した。このBDP96コアについて、深さ2mに4試料の頻度で最深部まで合計560試料の花粉分析を行った(写真2)。560試料について1cm3の泥試料に含まれる花粉総量は最低が0個、最高が約20万個を示し、その増減には規則的な周期性が見られた(図2)。バイカル湖底泥の花粉総量の周期的な増減は何を意味するのか?これまでに湖岸流域で詳細に調べられた結果、最終氷期最盛期(2.3~1.5万年前)の植生は、寒冷砂漠であり(写真3)、完新世中頃(0.9~0.4万年前)にはすでに亜寒帯針葉樹林(タイガ)(写真4)が成立していたことが分かっている。湖底表層泥の花粉分析結果によると、寒冷砂漠時代の湖底泥中の花粉堆積速度は24個・cm-2・years-1以下であり、森林時代では80個・cm-2・years-1以上である。これをBDP96コアの堆積速度(4cm/1000年)に換算すると、花粉総量が6000個/cm3以下では流域が寒冷砂漠であったことを示し、20000個/cm3以上では森林であったことを示すことになる。BDP96コアの花粉総量の変動を6000個/cm3以下(砂漠)、6000から20000個/cm3(ステップ)、20000個/cm3以上(森林)と区分し、その変動を時間軸に表すと、コア上端の7.6万年前から下端の505万年前まで、砂漠―ステップ―森林のサイクルが規則的に繰り返されたことが判明した(図2B)。バイカル湖流域では過去500万年間で57回もの砂漠と森林の交替の歴史が明らかになった。

なお本研究は、科学技術振興調整費総合研究「バイカル湖の湖底泥を用いる長期環境変動の解析に関する国際共同研究」(日・露・米)で実施され、森林総研は植生変遷に関する研究を担当した。
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