落葉広葉樹における伐採後の枝条処理による窒素供給の制御

タイトル 落葉広葉樹における伐採後の枝条処理による窒素供給の制御
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 平井 敬三
石塚 成宏
発行年度 1998
背景・ねらい 森林を伐採すると、林地に多量の枝や葉などの有機物(枝条)が残される。枝条は微生物により分解され、放出された養分が再生した樹木の成長を支える。しかし、大量の枝条が一度に分解されると、植物の吸収量を上回る養分が供給される。その結果、植物に重要な窒素の一部は、温室効果ガスである一酸化二窒素(N20)として放出されたり(脱窒)、硝酸態窒素として渓流中に流れ出して水質を悪化させる。ここでは、伐採後に残された枝条の分解を制御し、樹木の成長に見合う量の窒素を徐々に供給することで、森林生態系外への窒素流出による環境負荷を少なくする方法の開発をめざした。
成果の内容・特徴 1996年初春に42年生のコナラ、シデ類を主とする落葉広葉樹林を皆伐し、林地に残された枝条を棚積みした区(棚積区)と取り除いた区(除去区)(写真1)、及び隣接する林分に伐採しない区(非伐採区)を設けた。それぞれの区で、落葉分解による窒素放出量と、表層土壌中の有機物から放出される窒素(窒素無機化)量を測定して比較検討した。

落葉分解による窒素放出量は除去区が非伐採区より約2倍大きくなったが、棚積区では除去区よりも明らかに小さく(図1)、枝条の棚積みは窒素の放出を緩やかにする効果を持つことが明らかになった。一方、深さ5cmまでの表層の土壌有機物から放出される窒素量は、棚積区でも非伐採区の約3倍に達し、伐採による増加はヘクタール当たり約20kgであった(図2)。これは樹木が取り除かれて地温が上昇したことや、伐採作業による表層土壌の撹乱が土壌有機物の分解を促進したためと考えられた。

伐採地から系外への窒素流出は、伐採直後に渓流水の窒素濃度が非伐採区に比べて顕著に増加するが、3か月後には非伐採地の濃度まで低下しており、伐採の影響は長く続かないことが明らかになった(図3)。また、ガス態による窒素の放出量はいずれの区でも極めて少なく、伐採の影響による温室効果ガスの増加は認められなかった。

森林伐採後、林地に残される枝条を棚積みすることで、有機物の急激な分解を抑制し、植生回復に必要な窒素を長期間にわたり緩やかに供給できることが明らかになった。またその結果として、渓流水の伐採に伴う窒素濃度の上昇を抑制する効果も期待できることが示唆された。さらに伐採によって心配された温室効果ガスの発生はないことも明らかとなった。

なお、本研究は農林水産技術会議大型別枠研究「農林水産生態系生態秩序の解明と最適抑制に関する総合研究」による。
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