タイトル | 天敵昆虫サビマダラオオホソカタムシの大量飼育技術の開発 |
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担当機関 | 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
小倉 信夫 |
発行年度 | 1998 |
背景・ねらい | 我が国では、マツノマダラカミキリが媒介するマツノザイセンチュウによる松枯れが依然として続いており、また、中国では北部砂漠地帯での大規模な植林事業 いわゆる「緑の長城計画」において、主要樹種であるポプラ類がゴマダラカミキリによって壊滅的な被害を受けている。これらの被害をもたらすカミキリムシの 防除研究の一環として天敵昆虫の探索とその利用法開発が求められてきたが、近年両種に共通する天敵昆虫であるサビマダラオオホソカタムシの作用機作が明ら かとなり、防除への利用の可能性が高まった。そのためには本種を野外に大量放虫する必要があり、基礎技術としての大量飼育技術を確立する必要がある。 |
成果の内容・特徴 | サビマダラオオホソカタムシ成虫は体長約1cm、全体に鉄錆色でまだら模様がある(写真1)。蚕蛹粉末・乾燥酵母・蔗糖・ペプトン・鶏卵黄及びセルロースを混合した粉末状の人工飼料と蒸留水を餌として与えることで、採卵できた(写真2、3)。孵化幼虫は体長約0.7mmで(写真4)、カミキリムシ幼虫に食いついて毒素を注入し、それによって麻痺あるいは死亡したカミキリムシ幼虫に頭部をさし込んで体内の液やどろどろになった昆虫組織を吸って発育した(写真5)。その後、硬い繭を作ってその中で蛹になった。卵、幼虫及び蛹期間は、25℃でそれぞれ約13、21及び15日であった。このような基本的な発育生理をふまえて、この天敵をより安価により大量に飼育するために、蚕蛹粉末・乾燥酵母・酵母抽出物・蔗糖・ペプトン・大豆油とラードの混合物・仔牛血清・寒天・防腐剤・蒸留水などを成分とする人工飼料による幼虫の飼育技術の開発に引き続き取り組んだ。 あらかじめ、カミキリムシ幼虫の代用昆虫として与えたハチノスツヅリガ幼虫に食いついたサビマダラオオホソカタムシ幼虫を、そのまま幼虫用の人工飼料(ゲル状)の上に置いた(写真6)。 この代用昆虫と人工飼料を食べて体長8mm以上に育った幼虫に、ほぼ同成分の人工飼料をしみ込ませた脱脂綿を与えて継続して飼育した(写真7)。 これらの幼虫は体長約16mmに発育した後、繭を作った(写真8)。羽化した成虫は大きさ・行動ともにカミキリムシ幼虫を食べて育ったものと違いがなく、この成虫が産下した卵から孵化した幼虫一頭とマツノマダラカミキリ幼虫一頭ずつを試験管に閉じ込めたところ、カミキリムシ幼虫は孵化幼虫の攻撃を受けてほとんどが6日以内に死亡し、天敵としての能力は同等であった。 現在、このような方法で大量飼育したサビマダラオオホソカタムシを用いて、カミキリムシの防除試験を行っている。 |
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カテゴリ | 病害虫 乾燥 飼育技術 大豆 鶏 防除 |