衛星データによる天然ヒバの蓄積と利用可能量の推定

タイトル 衛星データによる天然ヒバの蓄積と利用可能量の推定
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 沢田 治雄
松村 直人
石橋 聡
鷹尾 元
中園 悦子
三塚 直樹
永谷 泉
穴澤 道雄
川端 幸蔵
発行年度 1998
背景・ねらい 青森県の下北半島と津軽半島の天然林に見られるヒバは、周辺の林産業を支える重要な針葉樹であるとともに、貴重な森林を形成する。そのため、持続的かつ安定的な供給と保護を両立させる必要があり、ヒバの利用可能量に関する情報は不可欠である。しかし、全域を踏査する資源把握は極めて多大の労力を要するため、これまで行われていなかった。そこで、地上調査と衛星リモートセンシングデータを用いて、資源調査の軽減を図るとともに、地理情報システムを用いて、地形条件などによる伐採制限要因を分析することで、実際に利用可能な天然ヒバの蓄積量を推定する手法を開発した。
成果の内容・特徴 はじめに、パソコンによる地理情報システムを用いて、地上プロット調査データと衛星データ、標高データ、森林管理計画図、森林機能図などのデータを統合化した。衛星データは地上分解能(画素)が約0.1haで、七つの波長帯の反射波を観測するランドサット衛星のセマティックマッパー(TM)データを用いた(図1)。次に、このTMデータに、地形による太陽入射光量の違いに左右されにくいパターン展開法を適用して、ヒバの蓄積量分布図を作成する手法を開発した。さらに、地形解析や距離分析などによって利用可能なヒバの蓄積量を推定した。以下に大畑営林署の例を示す(図2)。

標高データから斜面傾斜角を算出し、ヒバの蓄積量分布との関連分析を行った。その結果、傾斜角が急なほど残存する天然林の割合が多くなり、ヒバの平均蓄積量も多くなるという妥当な結果が示された(図3)。また、傾斜角25~30度付近で伐採等の施業に制限があることも読みとれる。

同様に、林道から離れるに従って天然林の割合が増加している(図4)。しかし、残存するヒバの平均蓄積量は、道路から離れるに従って増加するものの、200m以上離れた所では極めて小さいことが示された。これは、既設の林道がそもそもヒバの多いところに開設されていることをうかがわせ、これ以上の林道開設はヒバの利用面での効果は薄く、慎重にすべきことを示している。

大畑営林所管内での森林機能区分は、自然維持林、国土保全林、森林空間利用林、木材生産林の4機能に分かれる。木材生産林域で、道路からの距離が200m以内で、斜面傾斜角25度以内にあるヒバの蓄積集計を行った。その結果、利用可能なヒバは全蓄積量の約20%であることなどが分かった。

これらによって、天然林における針葉樹の蓄積調査で、衛星リモートセンシングと地理情報によって、地上調査を補完し、利用可能蓄積に関する面的な情報が効率的に得られることを示せた。

なお、本研究は環境研究総合推進費「人工衛星データ等を利用した陸域生態系の3次元構造の計測とその動態に関する研究」による。
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図表2 212476-2.gif
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図表4 212476-4.gif
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カテゴリ リモートセンシング

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