無塩素漂白法の開発

タイトル 無塩素漂白法の開発
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 眞柄 謙吾
細谷 修二
富村 洋一
発行年度 1998
背景・ねらい 最近、廃棄物の焼却に伴って生成するダイオキシンが大きな社会問題となっているが、クラフトパルプの塩素漂白工程においても同様にダイオキシンが生成し環境中へ排出されている。絶対量は焼却の場合と比較して少ないものの、そのいくらかは紙に残留している可能性もあり、対策は極めて重要である。このダイオキシン生成を根絶するには、漂白工程で使用される塩素を無塩素系の漂白剤に代替する必要がある。そこで本研究では、塩素に匹敵する漂白能力を持つオゾンを中心に、酸素、希硫酸及び過酸化水素を組み合わせた無塩素漂白法を開発することを目的とした。
成果の内容・特徴 塩素と同等の漂白能力を持つ非塩素系漂白剤としてオゾンが注目されているが、これまでの研究では、オゾンが着色物質(リグニン)を分解するときの副反応により漂白中にパルプが化学的に解重合されて、パルプ強度の指標である粘度(目安は20cp)が低下することが明らかとなっており、従って紙としての強度も大きく低下するものと考えられてきた。そこで、漂白中のパルプの解重合を防ぐために、パルプスラリー(パルプ濃度10%)とオゾンガスを効率的に混合するハイシェアミキサーを用いてパルプをオゾン漂白したところ、パルプ粘度を約20cpに維持した状態で、パルプ中のリグニン含有量の指標であるカッパー価(目安は4以下)を3以下に落とすことが可能であった(図1)。また、これら漂白パルプから作成した試験紙の強度を測定したところ、たとえ過剰にオゾンを添加して粘度の低下したパルプでも、これまで考えられていたような大きな強度低下は認められず(表1)、このオゾン漂白パルプから作成した紙は、塩素漂白の場合と同程度の強度を有していた。続いて、これらオゾン漂白パルプを過酸化水素で最終漂白したところ、市場に流通している塩素漂白パルプに匹敵する白色度80%のパルプの製造が可能であった(表2)。

オゾンは、酸素ガス中への放電によって製造されており、その発生に必要な電力は技術改良により現在1kg当たり約10kWまで低下してきているが、電気料金の高い我が国では塩素と比較すると依然として高価であり、その添加量の削減は重要である。そこで、オゾン漂白の前段にオゾンより低コストの酸素漂白または希硫酸漂白を組み入れて、あらかじめパルプ中のリグニンの含有量を減らすことによりオゾン使用量の削減を試みたところ、オゾン添加量を対パルプ当たり0.3wt%まで減らしても塩素漂白とほぼ同等の粘度を維持しながらカッパー価を落とすことが可能であった(図2)。

なお、本研究は環境庁国立研究機関公害防止等試験研究費「パルプ産業におけるダイオキシン等有機塩素化合物の生成機構の解明ならびに生成防止技術、除去・無害化技術の開発に関する研究」による。
図表1 212477-1.gif
図表2 212477-2.gif
図表3 212477-3.gif
図表4 212477-4.gif
図表5 212477-5.gif
図表6 212477-6.png
図表7 212477-7.png
図表8 212477-8.png
図表9 212477-9.png
カテゴリ 低コスト

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