低ホルムアルデヒド合板の開発と安全性の評価

タイトル 低ホルムアルデヒド合板の開発と安全性の評価
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 井上 明生
塔村 真一郎
発行年度 1998
背景・ねらい 近年、化学物質による室内空気汚染、いわゆるシックハウスが社会問題になっている。1997年6月には厚生省がホルムアルデヒドの室内濃度指針値(0.08ppm)を示した。一方、農林水産省では1980年からすでに、合板のJAS規格(日本農林規格)の中にホルムアルデヒド放散量試験方法と基準値を規定してきた。しかし、JAS規格の試験方法(材料試験)は、室内濃度を直接測定するものではない。そこで、JAS試験の基準値と室内濃度との関係を明らかにし、針葉樹合板の安全性を評価することを目的として、針葉樹単板・合板のホルムアルデヒド放散量を測定した。
成果の内容・特徴 最近開発されたホルムアルデヒドを含まない接着剤(水性高分子・イソシアネート系接着剤)またはホルムアルデヒド含有量の少ない接着剤(フェノール接着剤と改良型ユリア接着剤)を用いて合板を製造し、JAS規格に従ってホルムアルデヒド放散量を測定した(図1)。その結果、以下のことが分かった(図2)。
  1. 天然の木材からもホルムアルデヒドが放散する(ホルムアルデヒドは食品などにも含まれていることが知られており、もともと天然に存在する化学物質である)。
  2. ホルムアルデヒドを含まない水性高分子・イソシアネート系接着剤による新しい合板の放散量は天然の木材とほぼ同じである。
  3. フェノール接着剤による合板はJAS規格の中の最も厳しい区分であるF1の基準値(0.5mg/L)をほぼ満足した。
  4. 改良型ユリア接着剤による合板については、広葉樹(メランチ)はF1の基準値を満足したが、その他の針葉樹ではF1の基準値を超えた。ただし、F1の基準値を超えた合板についても室内で3週間放置すると放散量は0.28mg/L以下まで低下した。3週間後の放散量(JAS試験値)から室内濃度を計算すると、厚生省の指針値をほぼ満足できることが分かった(表1)。従って、JAS試験によるホルムアルデヒド放散量が1.5mg/L程度以下の低ホルムアルデヒド合板は、3週間後には下地用としてはもちろん内装材として用いても厚生省の室内濃度指針値をほぼ満足できることが分かった。ただし、室内濃度は温度・湿度・換気量・材料表面積などの影響で変化するため、材料選択とともに換気量の確保などが実際の住宅では極めて重要であることが分かった。
化学物質の中で室内濃度指針値が示されているのはホルムアルデヒドだけなので、可塑剤やVOC(揮発性有機化合物)などの化学物質を含んでいることが問題視されているその他の材料に比べて、低ホルムアルデヒド合板は安全性を明確にできる材料である。
図表1 212478-1.gif
図表2 212478-2.gif
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図表4 212478-4.png
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