タイトル | 山地小流域からの炭素成分の流出実態 |
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担当機関 | 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
坂本 知己 寺嶋 智巳 中井 裕一郎 高橋 正通 松浦 陽次郎 |
発行年度 | 1998 |
背景・ねらい | 大気中の二酸化炭素量の増加が地球温暖化との関係で問題となり、森林による炭素固定量の測定が様々な方法で試みられている。植物の光合成によって大気から吸収された炭素は、植物の呼吸や、落葉落枝や倒木が土壌微生物等に分解されることによって大気に戻るだけではなく、浮遊態の有機炭素POC、溶存態の有機炭素DOC、溶存態の無機炭素DICとして水に含まれて森林から流出している。この課題では、山地小流域からの渓流水を通じて流出する炭素成分の季節変化、出水時における変化、並びに年流出量を求めることを目的とした。 |
成果の内容・特徴 | 対象地は、広葉樹に針葉樹が混じる天然生林に覆われている北海道支所定山渓流域試験地(2.0ha)である。炭素成分を測定するために、自動採水システムを用いて流量変動に合わせて採水した。 POCは、はっきりした季節変化はなく出水時のみに増加したが、融雪出水時の濃度は流量が多いにもかかわらず降雨出水時に比べると低かった。DICは、融雪開始とともに減少し融雪最盛期に最低となった。その後8月から9月にかけて次第に増加し再び徐々に減少した。DOCは、融雪開始期に急増し消雪とともに急減した。その後7月から10月にかけて徐々に増加し、再び徐々に減少した(図1)。 降雨出水時に、DICは増水に合わせて減少し減水とともに増加した。DOCはDICとは逆の変化をしたが、晩秋の出水時にはDICと同様の変化をした(図2)。融雪出水に関しては、いずれも融雪初期には反応したが、融雪最盛期の流出水量の日周変動に応じた変化は示さなかった。 以上の結果は、流出経路との関係では、DICが土壌層下部のゆっくりとした基底流出に、DOCが土壌層上部の早い直接流出に関係すること、また、供給源との関連では、DICが植物の根や土壌微生物の呼吸と、DOCが土壌中の有機物の分解量に対応していることを示している。 1996年の流出量は、水が925mm/y、POCは21kg/ha/y、DICは19kg/ha/y、DOCは33kg/ha/yであった(表1)。本対象地のリターフォール乾物量を3~4ton/ha/yと見積もり、その50%が炭素だとすると、おおよそ3%が渓流を通じて流出している。融雪水の炭素濃度は降雨出水時と比べて低いが、年流出水量に占める融雪期間中の水量の割合が高いために、年間の炭素成分流出量に占める融雪期の割合は高い。また、融雪期以外では、炭素の流出は降雨出水時の短期間に集中している。これは、地球温暖化で降水が雪から雨に変わった場合、流域からの炭素の流出量が格段に増加することを予想させる。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
図表6 | |
カテゴリ | くり |