マレーシア熱帯雨林における蒸発散と群落コンダクタンスの特性

タイトル マレーシア熱帯雨林における蒸発散と群落コンダクタンスの特性
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 谷 誠
大谷 義一
渡辺 力
岡野 通明
野口 正二
安田 幸生
Abdul Rahim Nik
Zulkifli Yusop
発行年度 1998
背景・ねらい 熱帯雨林の気侯形成に及ぼす影響を評価するためには、森林・大気間の蒸発散を含むエネルギー交換を推定するだけではなく、これらが環境条件に応じてどのように変化するかを明らかにすることが重要である。森林総研は、半島マレーシアパソー森林保護区において、低地フタバガキ林に設置された52mの観測タワーを用いて気象観測を続けてきた。ここでは、微気象観測により求められた蒸発散量を基に、群落全体における蒸散をコントロールする群落コンダクタンスを推定した結果を報告する。
成果の内容・特徴 タワーにおいて、樹冠上2点の高さ(43.6m及び52.6m)における気温と水蒸気量(比湿)を測定し、その差からボーエン比法によって蒸発散量を求めた。この値を既知とし、Penman-Monteith式を使って、群落コンダクタンスの値を計算した。この式は、乱流輸送をコントロールするパラメータである空気力学的抵抗、群落を一枚の葉とみなしたときの気孔抵抗に相当するパラメータである群落抵抗を用いて蒸発散量を計算するものである。これに蒸発散の値を入れれば、群落抵抗の逆数である群落コンダクタンスの値を逆算することができる。

一方、樹木が葉の気孔開閉によって蒸散をコントロールする機構を表す気孔コンダクタンス(気孔抵抗の逆数)は、一般に、日射、気温、飽差、土壌水分などの環境条件によって変化し、群落コンダクタンスも同様に変化する傾向がある。ここでは、熟帯気候のために気温の影響が小さいとし、光条件と空気の乾燥条件を代表する日射と飽差が群落コンダクタンスに与える影響を検討することにした。

タワーにおける1995年3月から1998年11月までの気象観測結果を図1に示す。この観測期間の中で、日射や飽差が大きく乾燥していた時期であった、1998年3月のデータを解析した。その結果、図2のように、微気象観測から求められた群落コンダクタンスは、経験的に与えられた飽差と日射によって表される関数(Jarvisモデル)に従うことが分かった。この関数を用いて群落コンダクタンスと蒸発散量の日変化を計算した結果を図3に示す。変化傾向がよく再現されていることが分かる。

空気の乾いた条件においても、蒸発散量が日射と飽差によってほぼ決まることになり、大きな蒸発散潜熱の消費によって大気加熱を抑制し続けることが分かった。

なお、この研究は地球環境総合推進費「熱帯林の環境保全機能評価に関する研究」により、マレーシア森林研究所との共同研究として行った。
図表1 212491-1.gif
図表2 212491-2.gif
図表3 212491-3.gif
図表4 212491-4.png
図表5 212491-5.png
図表6 212491-6.png
カテゴリ 乾燥 光条件 輸送

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