熱帯雨林の択伐が動物相に及ぼす長期的影響

タイトル 熱帯雨林の択伐が動物相に及ぼす長期的影響
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 三浦 愼悟
福山 研二
前藤 薫
発行年度 1998
背景・ねらい 熱帯雨林は地球上で最も豊かな生態系であると同時に、極めて急速に生物多様性が失われている場所でもある。熱帯雨林の生物種と生態系の多様性を維持することは森林管理者の責務である。すでに伐採が進んだ低地林では、新たに大規模な保護区を設定することが難しいので、残存する自然林を核としながらも、それに二次林を組み合わせて地域全体として生物多様性を維持する必要がある。

本研究では、野生動物の生息場所としての二次林の活用技術を開発するため、まず択伐後相当な年数が経過した二次林の動物相を自然林と比較することによって、択伐の長期的影響を検討した。
成果の内容・特徴 マレー半島低地のパソー森林保護区内の自然林とそれに近接する二次林のほか、保護区の林縁部、周辺のアブラヤシ園やゴム園、小面積残存林に調査区を設定し、哺乳類、土壌動物、林床性タテハチョウ類等の生息状態を調べた。調査した二次林は、1950年代に自然林を択伐した後に自然更新した択伐二次林であり、林分構造は順調に回復しているものの、大径木が少ないためか自然林に比較して林冠ギャップが乏しく、林床植生はやや貧弱であった。

哺乳類の調査は、自動撮影装置によって行った。1日当たり撮影枚数を哺乳類の出現頻度とすると、自然林における出現頻度が最も多く、次いで二次林、林縁、残存林、ヤシ園の順であった(図1)。種数も自然林が最も多く、種組成も他の調査地とは明らかに異なっていた。

土壌動物のうちササラダニ類の種数を見ると、ゴム園とヤシ園は自然林より少なかったが、二次林は自然林とほぼ等しかった。しかし、種間の個体数バランスを示す種多様度指数は、自然林、二次林とゴム園、ヤシ園の順に低下し、二次林のササラダニ相は自然よりもやや単純であった(図2)。

ジャングルバタフライと呼ばれる林床性のタテハチョウ類を発酵果実トラップによって調査した。自然林だけで捕獲されたタテハチョウの種数は、二次林だけで捕獲されたものよりも明らかに多く、この傾向は食餌植物の種類が違っても同様であった(写真1、図3)。

以上のように、択伐二次林の動物相は択伐後ほぼ40年経過後も自然林と明らかに異なっており、択伐による影響は相当長期間続くものと推察した。熱帯林においては、野生生物への長期的影響を考えて択伐の規模や頻度を設定するとともに、林冠閉鎖後は積極的にギャップ形成を促すような二次林施業を行うなど、生物多様性の維持・回復に配慮した森林管理が望まれる。

なお、本研究は環境庁地球環境研究総合推進費「熱帯環境林における野生生物の多様性と持続的管理のための指標に関する研究」により、マレーシア森林研究所と共同で行った。
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