川はどこから始まるか?

タイトル 川はどこから始まるか?
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 坪山 良夫
竹内 美次
村上 茂樹
志水 俊夫
発行年度 1999
要約 渓流の行き止まりである、谷頭斜面での降雨流出特性を観測により明らかにした。さらに、主に地形因子をパラメーターに用いたモデル解析により流域全体の流れが再現できることを示した。また、乾期の谷頭斜面のように流出量の少ないときは、地形以外の因子に作用することが解った。
背景・ねらい 川の水量が季節や雨によって、大きく変わることは周知の事実であるが、それを正確に予測するには流域内の水移動についての科学的知識が必要になる。大きな河川も元をたどれば無数の渓流の集まりであり、渓流を遡れば、やがては谷頭斜面と呼ばれる凹地形に行き当たる。谷頭斜面は山と川の出会う場所であり、水や各種の物質が集まり、気候条件の変化や土地利用の改変など流域で起きるさまざまな変化の影響を最も敏感に受けやすい場所でもある。したがって、森林の多くが山岳地にある我が国では、このような場所における水や物質の動き方を解明し予測できるようにすることが、森林管理という点からも重要な課題となる。このような背景から、本課題は谷頭斜面における水の動きに焦点を当てた。
成果の内容・特徴 水戸森林管理署管内堂平国有林(茨城県常陸太田市)内の試験地において、谷頭斜面(HZ;0.25ha)、1次流域(HA;0.84ha)、そして、これらを含む観測流域全体(HB;2.48ha)の流出量を、降水量や谷頭斜面内の地下水位と共に観測した(図1)。その結果、谷頭斜面が流域全体の流出に寄与する程度は、まったく流出の生じない状態から、単位面積当たりでは流域内で最も多くの流出を生じる状態まで、流域全体の乾湿状況に応じて大きく変化することが明らかになった(図2)。さらに谷頭斜面からの流出が飛躍的に増加するのは、谷頭斜面の上部(上部谷頭凹地)と下部(流出口)を繋ぐような地下水分布が現れる時と一致することが判明した。

さらに、このような谷頭斜面の流出特性をより定量的に解析するため、TOPMODELと呼ばれる準分布型流出モデルを観測結果に通用した。図1に示すように、このモデルは、流域内の水分布や流れのパターンを、主に流域地形に関するパラメータから予測できるように作られており、モデルの名前は“地形”(topography)に由来している。モデルによる流域全体(HB)の流出の再現結果は良好であった(図3)。しかし、谷頭斜面(HZ)の流出については乾期の予測が実測と食い違っていた。これは、湿潤な時は水の駆動力として重力の影響が卓越し、それゆえに地形情報による予測がよい近似となるのに対して、乾燥している時には毛管張力など重力以外の影響も相対的に強くなることを示している。

以上のように、降雨量の大きな時は日常は流出がごく少ない谷頭斜面から大量の流出があり、その値は地域因子を主なパラメータとするモデルと一致していた。しかし、流域内の水移動には地域因子以外にもいくつもの因子が作用しており、それらの因子を考慮して、より広範囲な状況に通用しうる予測法を作ることが今後の課題である。幾つもの力が作用しており、単一の因子(この場合は地形)だけから予測するのは不可能である。
図表1 212494-1.gif
図表2 212494-2.gif
図表3 212494-3.gif
図表4 212494-4.png
図表5 212494-5.png
図表6 212494-6.png
カテゴリ 乾燥

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