森林生態系と大気の間のエネルギー交換をモデル化する

タイトル 森林生態系と大気の間のエネルギー交換をモデル化する
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 渡辺 力
大谷 義一
溝口 康子
安田 幸生
岡野 通明
発行年度 1999
要約 気候予測などに使われる大気モデルに対して森林の効果を適切に反映させることを目的とし、森林と大気の間の熱や水蒸気の交換過程を川越市の落葉広葉樹林でのタワーを用いた継続観測データをもとにモデル化した。
背景・ねらい 森林は大気との間で熱や水蒸気をやりとりしている。そのため、森林は大気中の熱量分布に影響を与え、大気中の流れを変化させるので地域や地球的な規模の気候に影響を及ぼす。これがいわゆる「森林の気候形成機能」で、この機能を定量的に説明する努力が続いている。その一つとして、大気大循環モデル等の大気モデルを利用して定量化する方法が考えられるが、それには大気モデルに対して森林の効果を取り入れる手法が未だ不十分である。そのため、この研究では、森林と大気の間の熱や水蒸気の交換過程を、川越市の落葉広葉樹林でのタワーを用いた継続観測からモデル化した。
成果の内容・特徴 森林上に降り注ぐ太陽光のエネルギーは、一部が葉面などで反射され、別の一部が林冠を透過して地面に達するが、残りの大部分は林冠で吸収される。このエネルギーによって、葉や土壌に含まれる水分が蒸発したり、それらに接する空気が暖められる。このとき群落内の大気中に放たれた熱や水蒸気は、群落内を通り抜ける風の渦(乱流)によって群落の外へ運び出され、大気中へ広がっていく。このような森林と大気の間の熱や水蒸気のやりとりを、森林の葉量、葉の光吸収特性、風に対する抵抗係数、葉の熱交換係数、林冠と地面の蒸発効率(蒸発の起こりやすさを表す指数)などの指数を組み合わせて説明できるモデルを開発した(図1)。

ところで、これらの指数の中でモデルの予測精度に最も大きな影響を及ぼすのは林冠の蒸発効率であり、これをいかにうまく数式で表現するかがモデル開発のポイントである。そこで、蒸発効率の実態を調べるため、川越における観測データを解析し、林冠の蒸発効率を求めた(図2)。つまり、蒸発効率は4~5月の葉の展開とともに急激に増加し、落葉直前まで徐々に上昇を続け、落葉とともに急減する(11月)。いずれの季節においても日射量が多いほど蒸発効率が大きい傾向がある。また、季節内の細かな変動は、その時の気象朱件における乾燥度を表す指数である可能蒸発量の変動にほぼ対応していた。そこで、林冠の蒸発効率を日射量と可能蒸発量の関数として表現する方式を新たに開発し、モデルに用いることにした。こうして作られたモデルを使い、川越市で観測された気象条件の下で、森林と大気の間のエネルギー交換量が日変化する様子を再現した結果が図3である。森林での蒸発散による潜熱(水分の蒸発に費やされるエネルギー)や顕熱(森林が大気を加熱するエネルギー)の変化が良好に再現されている。今後、このモデルを大気大循環モデルなどの大気モデルに組み込み、気候のシミュレーションを行うことで、森林の気候形成機能がより定量的に評価できるようになる。

なお、本研究は環境庁地球環境研究総合推進費「気候・物質循環モデルによる気候変動の定量的評価に関する研究」による。
図表1 212495-1.gif
図表2 212495-2.gif
図表3 212495-3.gif
図表4 212495-4.png
図表5 212495-5.png
図表6 212495-6.png
カテゴリ 乾燥

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