タイトル | ドカ雪時に起こる表層雪崩の発生予知システム |
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担当機関 | 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
遠藤 八十一 山野井 克己 庭野 昭 小南 裕志 |
発行年度 | 1999 |
要約 | 大規模な雪崩災害は、短時間に多量の雪が降るドカ雪時に起こることが多い。そこで、時間毎に新たに積もった雪の深さを推定するシステムを開発し、これにより得られた諸量を用いてドカ雪時の雪崩予測を可能にした。 |
背景・ねらい | 大規模な雪崩災害は、氷点下で短時間に多量の雪が降るドカ雪時に起こることが多い。雪崩の発生予知には、積雪深(地面から雪面までの雪の深さ)や降雪深(ある時間内に新たに積もった雪の深さ)、降水量、気温などのデータが必要であるが、降雪深を自動計測する装置は実用化されていない。降雪深は雪国の道路除雪に欠かせないデータでもある。そこで、自動計測が可能な積雪深と降水量のデータを用いて、積雪の縮みを計算し降雪深を推定するシステムを開発した。また、このシステムから得られた諸量を用いて斜面の雪の密度、強度、荷重、安定度を推定し、ドカ雪時の雪崩予知を可能にした。 |
成果の内容・特徴 | 地面に積もった雪は、自重やその上に積もった雪の荷重によって常に縮んでいる。このため、図1に示すように、時刻1から2までの間に新たに積もった降雪の深さは、 時刻1~2の降雪深=時刻2の積雪深-圧縮による時刻2の1層の厚さ である。この式の右辺第2項は、時刻1の1層の厚さ(=時刻1の積雪深)と垂さ(=時刻1の降水量)、1層に作用する荷重(=2層の重さ=時刻2の降水量)が分かれば、雪の粘性理論より計算できる。そこで、積雪深計と雨雪量計で測定されたデータを取り込み、平地における各時刻の各積雪層の厚さ、重さ、密度(重さ/厚さ)、並びに各層に作用する荷重を計算し、降雪深を計算・表示するシステムを開発した。このシステムで推定した日降雪深を実測値と比較した結果、その標準誤差は1.7cm、最大は±8cmであった(図2)。このシステムを降雪深自動計測システムとして特許申請し、商品化した。 平地における積雪内部の密度についてはいくぶん実測値と異なっていたが、降雪後間もない雪やドカ雪時の雪についてはほぼ正確であった(図3)。ところで、雪崩は斜面で起こり、雪の密度は斜面と平地で異なることが知られている。そこで、この違いを測定した結果、雪の密度は斜面の傾斜が急になるほど小さくなり、斜面の密度を推定する式として 傾斜角βの斜面上の密度=平地の密度×(cosθ)0.57 を得た。この式に、既往の密度と強度の関係式を用いて、斜面の雪の強度と安定度(=斜面の雪の強度/荷重の斜面分力)を求めた。多くの雪崩が発生した1995~96年冬について雪の安定度を計算した結果、雪崩は安定度が著しく低下した1月末~2月始めにかけて類発した(図4)。更に検証が必要であるが、この結果は、本システムによりドカ雪時の雪崩発生評価が可能なことを示している。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
図表5 | ![]() |
図表6 | ![]() |
図表7 | ![]() |
図表8 | ![]() |
カテゴリ | 自動計測 |