冬虫夏草類の人工生産

タイトル 冬虫夏草類の人工生産
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 佐藤 大樹
島津 光明
発行年度 1999
要約 液体振とう培養して増殖させた細胞を、蛾の蛹に注射接種することにより、冬虫夏草の一種サナギタケ(Curdyceps militaris)のキノコを、季節によらず、短期間で形成させるための簡便な方法を開発した。
背景・ねらい 虫を殺して生えるキノコ冬虫夏草(Cordyceps属)の仲間は、漢方薬や高級中華料理材料として注目を浴びている。しかし、野生のものを採集しているため高価であり品質も不揃いである。子嚢胞子を蛹にまぶしてキノコ形成させる既知の方法では、キノコ形成に80日以上の長期間を要していた。そこで、人工的に品質のそろったキノコをより短期間で生産する技術を開発することを目的とし、この菌類の大量生産、価格低下に資するための研究を行った。
成果の内容・特徴 冬虫夏草の一種サナギタケ(C.militaris)を液体振とう培養して増殖させた細胞を、蛾の蛹に注射接種することにより、サナギタケのキノコを生産する方法を開発した(写真1)。

サナギタケは、野外では蝶や蛾の蛹に感染して殺し、年1回夏にキノコを発生させる。この菌の接種源として、子嚢胞子(有性胞子)、分生子(無性胞子)、ハイファルボディ(体内で増殖するときの細胞)の3つが考えられた。子嚢胞子は大量に収集することが難しく、分生子は大量に形成できるが、接種用に懸潤する手間がかかるため除外した。ハイファルボディは、本来は昆虫の体内で形成されるが、液体振とう培養により懸瀞状態で簡便に得られるためこれを用いた(写真2、3)。

まずヨトウガ蛹に接種した。ハイファルボディの懸濁液を微量注射器で注入し、死亡した蛹をミズゴケに埋め込んだところ、20~25℃、約40日でキノコが完成した。さらに簡便にするために、ヨトウガより大形のカイコ蛹と、人用ツベルクリン注射器を用いて接種実験を行った(写真4)。蛹からあふれ出ない程度の量を接種することにより、カイコからもサナギタケのキノコが25℃、約50日で発生した。

以上、サナギタケの簡便なキノコ形成技術が開発された(特許出願中)。この方法により季節によらずにサナギタケを栽培できる。今回の方法は、あらかじめ液体培養でサナギタケの増殖状態を作ったこと、それを注射により虫の体内に直接接種したことが新たな点である。胞子をまぶす方法では、発芽した胞子が蛹の皮膚を貫いてその体内で増殖し、殺した後にキノコが形成される。今回の方法では、はじめから増殖時の細胞を接種をしているので、期間を短縮できたものと考えられる。

なお、本研究は農林水産技術会議バイオテクノロジー先端技術開発研究「昆虫機能利用と資源化に関する基礎研究」による。
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カテゴリ カイコ くり

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