小笠原における外来樹種アカギの繁殖抑制と在来樹種の保全

タイトル 小笠原における外来樹種アカギの繁殖抑制と在来樹種の保全
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 山下 直子
田中 信行
八木橋 勉
九島 宏適
垰田 宏
加茂 皓一
発行年度 1999
要約 小笠原諸島に侵入した外来樹種アカギの繁殖を抑制し、在来樹種シマホルトノキを増殖することを目的として、生活史特性や生理特性を調べた。アカギの繁殖抑制のためには雌木の枯殺と稚樹の抜き取りが有効であり、シマホルトノキの増殖のためにはクマネズミの排除と植栽が有効であることが解った。
背景・ねらい 小笠原諸島は、森林を構成する木本類の約70%が固有種という特異かつ貴重な森林生態系である。しかし、戦前の開拓により高木林のほとんどが畑にされ、また導入された外来樹種アカギが、残存する天然林へ侵入し、在来樹種に置き換わるところが増えてきており、在来樹種の絶滅が危惧されている。本研究は、アカギの繁殖を効果的に抑制し、原植生を復元する管理技術確立のため、在来種とアカギの生理や個体群動態に関わる諸特性の把握を目的として行った。
成果の内容・特徴 母島の湿性高木林におけるアカギの実生発生数は、在来種に比べて極端に多かった(図1)。アカギの実生発生数のピークは雨期後(5月~7月)であるが、1年中発芽がみられた(写真1)。また落下種子の一部は埋土種子化し長期間生存することが確認された(図2)。実生の生存率は在来種よりも高く、林内で大量の実生バンクを形成した。ギャップの形成による光環境の変化を想定して、アカギと在来種の弱光から強光への馴化能力を調べた結果、アカギは在来の先駆樹種や遷移後期樹種よりも、光阻害からの回復や最大光合成速度、相対成長量の増加率が高かった。これらの結果から、量的にも質的にもアカギが在来樹種に比べて繁殖に有利であることが明らかとなった(図3)。一方湿性高木林の優占種である在来のシマホルトノキは、落下した健全種子に対する発生した実生の割合(発芽成功率)は、わずか0.13-1.13%であった。シマホルトノキの種子は樹上および林床において外来種クマネズミ(Rattus rattus)による食害がみられた(写真2)。小笠原のような海洋島では、もともとネズミのような森林性哺乳動物を欠くために、在来植物は外来動物の食害に対する感受性が高いと思われる。

アカギの繁殖抑制のためには、種子源である雌木の枯殺と椎樹の抜き取りによる駆除が有効と考えられる。アカギ種子の埋土種子化は、種子供給量に依存していることから、種子の供給を絶てば、埋土種子は2~3年で大部分が消滅すると思われる。またシマホルトノキのような在来種を増やすためには、外来種のクマネズミの駆除を行うか、植栽が有効な手段と思われる。林内で発生したアカギ実生は被陰などにより減少するが、4年生の稚樹(高さ約30cm、地際径約1cm)で生存率が高くなる(図4)。よって、実生の駆除にはこの若木のステージが効率的である。

なお、本研究は、環境庁国立機関公害防止等試験研究「小笠原森林生態系の保全と修復に関する研究」による。
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カテゴリ 管理技術 繁殖性改善

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