スギ材のための蒸気加熱式乾燥法

タイトル スギ材のための蒸気加熱式乾燥法
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 齋藤 周逸
久田 卓興
発行年度 1999
要約 国産建築用材として代表的な樹種であるスギ材について、木材乾燥に関係する材質的な特徴や乾燥性を検討し、最も普及している蒸気加熱乾燥法に関して、特に背割り加工したスギ柱材の最適処理条件を明らかにした。
背景・ねらい 近年、建築用木材には、プレカット化等による工期短縮に加えて「住宅の品質確保の促進等に関する法律」がスタートしたことにより、今まで以上に乾燥処理が要求されてきている。これに伴って、建築用部材の含水率および強度性能の表示も求められるようになり、木材の工業材料化が進んできている。本研究では国産建築用材として代表的な樹種であるにもかかわらず乾燥技術について課題の多いスギ材について、木材乾燥に関係する材質的な特徴や乾燥性を解析し、最も多く普及している蒸気加熱乾燥法に対する最適処理技術の開発を行った。
成果の内容・特徴 スギ材の材質的な特徴として、材中に含まれる含水率(水分量)が他の針葉樹に比べて高く、個々の含水率のバラツキが大きいことがあげられる。本試験で用いた一般建築用のスギ柱材の含水率分布を図1に示した。木材の人工乾燥では、一般に乾燥処理前の含水率を揃えることで仕上がりの効率が良くなることが知られている。したがって、スギ材のように含水率の分布が広い材では、乾燥前に含水率を揃える選別が効果的である。現状では、乾燥前の含水率を正確に測定するのは難しいが、柱材の場合には乾燥前の含水率は重量からほぼ推定が可能であったため、図2の重量分布(114mm正角、3m材)と照らし合わせることで生材の含水率区分が可能になった。現在この方法は製材乾燥工場で実用化され普及しつつある。

心持ち柱材(樹心を含む材)で材面割れのない乾燥材を安定的に生産するためには、現時点では写真1に示した伝統的な背割り加工を行う以外に方法がない。ただし、背割り加工を行うことで材面および材内の割れを防ぐことは出来るが、背割り材は乾燥が不十分であると狂いが大きいという問題があった。これについては今回の試験研究によって図3のように含水率を20%になるまで人工乾燥を行い、さらに乾燥終了時に調湿処理を行うことによって、割れや狂いの少ない乾燥材の生産が可能であることが明らかになった。

材色は木の風合いを示す優れた要素であるが、蒸気加熱式の人工乾燥では温度が高いはど材色が暗くなる傾向がある。図4に乾燥温度による材色の変化を示した。100℃を超える人工乾燥では目視でも暗褐色化したと分かるほど変化が著しい。これに対して95℃以下では材色の変化量は小さかった。建築用柱材等の構造材でも著しく材色が変化したものは流通材として受け入れ難いことを考慮すれば、図4より70~95℃の乾燥温度が適当であると考えられる。

ところで、乾燥に要する時間(日数)は乾燥材の生産効率上重要な要因である。表1に温度が異なる場合の乾燥日数を示した。背割り加工したスギ心持ち材では、乾燥温度が85~95℃の場合に乾燥日数が約5日であるとから、1週間サイクルでの乾燥材生産が可能であり、この乾燥条件が最適と判断された。
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カテゴリ 加工 乾燥 品質確保

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