樹木の遺伝子組換えのための組織培養再生接術の開発

タイトル 樹木の遺伝子組換えのための組織培養再生接術の開発
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 石井 克明
木下 勲
毛利 武
丸山 工ミリオ
細井 佳久
発行年度 1999
要約 遺伝子銃による遺伝子導入の際有効な不定胚経由の樹体の再生系を数種の日本産針葉樹および、熱帯樹のマホガニーにおいて、世界で初めて開発した。
背景・ねらい 遺伝子組換えは、これまで不可能だった遺伝的に遠縁の生物種からの遺伝子や有用な突然変異遺伝子を、目的にあわせて利用できる優れた手法である。樹木においては、微生物アグロバクテリウムの感染力を活用する方法や物理的に遺伝子銃でDNAを直接導入することが行われてきた。遺伝子銃による遺伝子導入での場合、取り扱う植物組織によってはキメラが生じやすい。その点単細胞起源の不定胚培養系ではキメラの問題が生じにくい。そこで、遺伝子銃に適した培養系である不定胚経由の植物体の再生系を日本産針葉樹(スギ、ヒノキ、サワラ、クロマツ、アカマツ)と熱帯樹マホガニーで開発した。
成果の内容・特徴 スギにおける不定胚形成細胞の誘導実験では、材料として未熟種子(写真1A)が適していた。採取時期は6月下旬から7月中旬がよく、BAP(ベンジルアミノプリン)を0~5μMおよび2,4-D(2,4ジクロロフェノキシ酢酸)を0~10μM含有した1/2LP(レポバ)やスミス培地で誘導できた(写真1B)。不定胚形成細胞の維持・増殖はBAPを0~5μM、2,4-Dを3~10μM含有する1/2LPあるいは1/2MS(ムラシゲとスクープ)培地での液体培養で可能であった(写真1C)。不定胚形成細胞の成熟化に関してはPEG(ポリエチレングリコール)を7.5%、ABA(アブサイシン酸)を20~100μM含有したLP、1/2MS等の培地が通していた(写真1D-K)。培地への添加糖をスクロースからマルトースヘ変えると成熟化が促進される場合があった。これらの成熟不定胚を植物ホルモン無添加の培地に移植したところ発芽した(写真1L)。それを活性炭含有培地に移植したところ、再生植物が得られた(写真1M)。その後バーミキュライト培土に植え替え、順化させた(写真1N)。

ヒノキ、サワラ、クロマツおよびアカマツについても未熟種子や成熟種子を材料に用いて、不定胚形成細胞誘導培地、不定胚形成細胞維持・増殖培地、不定胚成熟培地、発芽培地を検索して、それぞれ再生植物を得ることができた。サワラの不定胚再生植物体(写真2)は、100本以上を苗畑に定植して成長を観察し、普通の苗と差がないことを確かめた。マホガニーの場合は実生由来の培養シュートの茎頂を、植物成長調節物質のゼアチンを1μM含むWP(木本植物)培地にて培養し、不定胚形成細胞を得た。不定胚の成熟には、スクロース2~6%、PEG0~15%、活性炭0~0.2%のWP培地を用いた。発芽再生した個体は、0.1%のハイポネックス溶液を含むバーミキュライト培土で生育させ(写真3)、その後順化にも成功した。

上記の種で世界で初めて不定胚経由の再生系が開発できたことは、これらの樹木の大量増殖や分子育種に役立つ。さらに再生効率を高めて今後の遺伝子組換えへの活用を図りたい。
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カテゴリ 育種 栽培技術

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