スギ林の花粉生産量及び花粉放出時期の予測

タイトル スギ林の花粉生産量及び花粉放出時期の予測
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 横山 敏孝
金指 達郎
発行年度 1999
要約 スギ花粉症対策の一環として花粉予測の精度を向上するために、スギ林の花粉生産量を推定する簡便な方法を開発するとともに、花粉放出時期予測の基礎となる雄花の開花条件を明らかにした。
背景・ねらい スギ花粉症の患者が都民の20%に達しており、スギ花粉症克服に向けてさまざまな取り組みが実施されている。この課題は、花粉予測の精度を向上させることに関係した研究である。これまでの花粉予測は、都市域に飛来した花粉数と都市域の気象条件との相関関係に基づいていた。これらは本来、因果関係のないものであり、予測の正確さに問題があった。そこで、スギ林の花粉生産量を推定する簡便な方法を開発するとともに、花粉放出時期予測の基礎となる雄花の開花時期を解明し、より正確な花粉予測を行うことを目的とした。
成果の内容・特徴 関東地方では、林齢25年以上のスギ林が主要な花粉発生源となっていた。花粉は雄花中に形成されるので花粉生産量は雄花量から推定できる。全体の平均では、8,386個/m2/年の雄花を生産した。しかし、雄花生産量はスギ林ごとに差異があり、同じスギ林でもその生産量は毎年大きく変動した。それ故、スギ林の雄花着生状態を一定の判定基準によって観測して数値化する方法を開発した。この推定値と雄花生産量の実測値との間の回帰式によって雄花生産量の推定が可能になった(図1)。南関東山地の花粉生産量(単位面積当たり)推定値と東京都心部の飛散花粉総数(ダーラム型測定器)との間には高い相関があり、この方法が飛散総数の予測法としても有効であることが解った。(図2)。

さらに、スギ雄花の開花日の予測手法を開発するために、雄花の休眠打破条件と休眠打破後の開花に至る過程の温度条件を明らかにし、次の結果を得た。雄花の休眠は8℃以下の低温条件に5週間置かれると完全に打破された。低温期間中に1週間当たり2日程度であれば16℃の高温を受けても休眠打破の効果は持続した。13℃以上の高温を含む変温条件(8時間の高温期間と16時間の低温期間の繰り返し)では効果がなかった。個体によって低温の要求度が違っていた。休眠打破後は0℃(発育限界温度)以上の温度で開花に向かって発育できた(図3)。以上のことから、スギ雄花が休眠から醒める日は、「平均気温10℃未満、最高気温12℃未満の日を約35日経過した日」として推定できる。休眠から醒めた後は温度の積算(有効積算温度)が170~250℃程度になると開花して花粉を放出する(図4)。野外におけるスギの開花で検証した結果は概ねよく一致した(図5)。

 なお、この研究は科学技術庁の生活・社会基盤研究「スギ花粉症克服に向けた総合研究」による。
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