ヒノキ人工林化によって生じる土壌特性の変化

タイトル ヒノキ人工林化によって生じる土壌特性の変化
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 山田 毅
吉永 秀一郎
発行年度 1999
要約 高知県南西部にある市ノ又山国有林の約200年生の天然林と30年生のヒノキ人工林について、両者の土壌特性を比較し、天然林をヒノキ人工林にすることによって地力の低下が必ずしも生じるわけではないことを明らかにした。
背景・ねらい 森林を皆伐した場合、地表が荒らされ、有機物の減少や土壌物理性の悪化など土壌が劣化することはよく知られている。とりわけ、豪雨・急傾斜地に造成されたヒノキ林では、伐採時の撹乱はもとより、林冠閉鎖後の下層植生の消失により、鱗片化した落葉が雨滴によって容易に流されてしまうため、地力の低下を招き易くなると言われている。そこで本研究では、ヒノキ人工林の管理技術をより高めるため、ヒノキ・モミ・ツガを主体とし、カシ類が混成する約200年生の天然林からヒノキ人工林へと樹種転換した場合の土壌特性の変化を検討した。
成果の内容・特徴 高知県南西部にある市ノ又山国有林内および近接する人工林において土壌調査を行い、約200年生の天然林と約30年生のヒノキ人工林の表層土壌の一般物理性を比較した。三相組成からみて、固相率は天然林、ヒノキ林でそれぞれ約30%、約20%と異なっていたが、孔隙率が70~80%と高く、液相率も25~40%と適潤であり、物理性に差はみられなかった(図1)。また、水分特性曲線からみた孔隙組成においても、天然林土壌と人工林土壌との間に大きな差は認められなかった(図2)。

市ノ又山国有林内において、同一立地条件下で相互に隣接し合った天然生広葉樹優占域、天然生ヒノキ優占域、および30年生ヒノキ人工林の表層土壌の化学性を比較した。その結果、天然生広葉樹優占域とヒノキ人工林でのpHと交換性カルシウムの量には大きな差は認められない(図3、4)。このことから、広葉樹優占域のヒノキ人工林化による土壌特性の変化は、植栽後30年程度の期間では顕著ではない。一方、天然生ヒノキ優占域でのpHは他に比較して著しく低い。また、交換性塩基の量も、元素ことにバラツキはあるものの、総量としては天然生ヒノキ優占域において減少している傾向が認められた。これらの結果は土壌の酸性化を意味する。

今日までヒノキ林化による土壌特性の変化の行方が様々論議されてきたが、今回の結果は、植栽後数十年程度の林分では特に顕著な変化は認められず、人工林化によって必ずしも地力の低下が生じているわけではないことを示している。しかし、化学性の結果は、ヒノキ人工林が高林齢化することによって土壌が酸性化に向かう可能性をも示している。つまり、ヒノキ林において長伐期施業を行うと土壌が酸性化し、地力が低下する可能性がある。そこで今後は、ヒノキ人工林施業を行う際の土壌変動情報を提供するため、ヒノキ人工林化による土壌の酸性化進行とその経時的変化の解析が必要である。
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図表2 212512-2.gif
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カテゴリ 管理技術 傾斜地

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