タイトル | タイ熱帯林の生育環境と季節変化の観測 |
---|---|
担当機関 | 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
沢田 治雄 齋藤 英樹 平田 泰雅 中北 理 穴澤 道雄 永谷 泉 |
発行年度 | 1999 |
要約 | タイに見られる典型的な熱帯林(山地常緑林、季節林、マングローブ林)を衛星リモートセンシングと地理情報システムを用いて、システマティックに調査し、その季節変動と経年変動の動態を明らかにした。 |
背景・ねらい | タイの熱帯林はモンスーン気候帯にあり、水分環境の変動によって顕著な季節変化を示す熱帯季節林が広く分布している。また、水分環境が安定している高地では山地常緑林が卓越し、南では熱帯林、海岸地帯ではマングローブ林が発達している。この中で、熱帯季節林地帯における科学的な長期観測研究はほとんど行われていなかった。そこで、本研究ではタイの典型的な熱帯林地帯を対象として、森林の分布と生育状況の季節変動及び経年変動を、衛星リモートセンシング技術を用いて、広い範囲で長期に渡って観測できる手法を開発し、その実態を明らかにした。 |
成果の内容・特徴 | タイ北部のチェンマイでは熱帯山地常緑林地帯が広がっている。雨季の終わりから乾季の終わりにかけて得られたランドサット衛星TMデータをいくつも重ね合わせて、落葉林から常緑林への移行帯が標高700m~800mにかけて分布しているようすが捕らえられた。また、衛星の相生指数データを用いて、うっ閉率や常緑・落葉の混交率を推定した。その結果、移行帯上部で今も焼畑移動耕作が類繁に行われており、落葉樹が侵入して森林の質的な劣化をもたらしているようすが明らかになった。 タイ中部のカンチャナブリではフタバガキ科を主体とする混交林が優勢である。現存植生と標高との関係はもはや薄れ、水分環境よりは人為的な影響(特に火入れ)によって複雑な植生分布を呈していることが明らかになった。また、この地域では潜在的な水分環境の把握が、造林樹種の選択や、造林地の管理にとって重要である。そのための手法として、TMデータの近赤外と中間赤外のデータを用いる水分含有指数(LWCI)を開発した。これによって、雲やヘイズの影響をあまり受けずに、植生の乾燥状況を相対的に観測できるようになり、水分環境区分図が作成できた。 タイ南部のパンガ湾周辺では、マングローブ林が発達しており、季節変化は極めて小さい。しかし、病気の蔓延のためにほぼ開発が止まっていたエビ養殖池が、近年再び急速に拡大し、マングローブ林が消失していく状況が確認できた。また、マングローブ林の立木密度の詳細な把握には、1画素内を植生、土壌、水の構成要素に分解できるパターン展開法が有効であることを示した。 さらに、このような全国規模での森林情報集積とモニタリングのために、全国サンプリング調査の設計とデータベース化を含めた熱帯林の調査・情報システムを設計し、試作した。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | 乾燥 季節変動 情報集積 データベース モニタリング リモートセンシング |