インドネシアのカミキリムシ類の目録作成

タイトル インドネシアのカミキリムシ類の目録作成
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 槙原 寛
発行年度 2000
要約 インドネシアの熱帯降雨林にある約1,000haの調査地では、わずか2年間の調査で日本全土の種数に匹敵する700種以上のカミキリムシが記録され、生物多様性の豊穣を裏付けた。また大規模な森林火災がカミキリムシに与える影響も初めて定量的に明らかとなった。
背景・ねらい インドネシア・ボルネオ熱帯降雨林はエルニーニョ現象により1997年~1998年に強い乾燥状態となり、その影響で1998年2~4月にかけ2回、大規模な森林火災に見舞われた。本研究は森林火災直前よりJICAプロジェクトでカミキリ相の調査を行っていたボルネオ熱帯低地林(東カリマンタン州)に棲息する森林昆虫の代表ともいえるカミキリムシ類を分類学的に整理し、目録(インベントリー)を作成することと、その基礎データに基づき、森林火災がカミキリムシ相に与えた影響を把握することを目的としている。
成果の内容・特徴 試験地は火災を受けたムラワルマン大学ブキットスハルト教育実習林(調査面積1000ha)と大規模な森林火災にも関わらずこの火災を受けなかった約30km離れたブキットバンキライの森林(調査面積500ha)で、前者は1997年12月から、後者は1999年4月から調査を行った。

ブキットスハルトでは700種以上のカミキリムシが得られた。この中にはボルネオを代表するCyriopalus属の種(図1)や変わった形態の新種(図2)も含まれていた。わずか2年間の調査で捕獲された種数は日本全土のそれに匹敵する。北米全土約2200万km2でカミキリムシ950種(図4)ということを考えれば、この数字は驚異的であるし、熱帯降雨林の生物多様性の高さが証明された。

湿潤な環境に棲息するホソカミキリ類、ノコギリカミキリ類、ハナカミキリ類と成虫が柔らかい生葉を後食するシラホシカミキリ類など良好な森林環境の指標種について、捕獲種・個体数の比較をした。その結果、いずれも火災を受けなかったブキットバンキライが多く(図5)、火災後1年や1年半ではカミキリ相からも良好な森林環境には回復していないことが明らかにされた。

高木林の林冠部に棲息し、火災前は捕獲数の少なかったGelonaehta hirtaは(図3)火災後、急激にライトトラップでの捕獲数が増加した。これは火災の影響で高木にこの虫の生息に適した枯枝が一時的に増えた結果だと思われる。しかし、火災2年後には減少してきた。これは、条件の良い枯れ枝が減少したことに起因していると考えられる。対照地であるブキットバンキライではずっと低密度でこのような傾向は認められなかった(図6)。ここでは示さなかったが、この他にもこのような傾向を示すものは多く、森林火災後、一時的にカミキリの個体数が増加するとよく言われるが、それが裏づけられる結果であった。

なお、本研究は国際協力事業団(JICA)プロジェクト、熱帯降雨林研究計画(Ⅲ)による。
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カテゴリ 乾燥 シカ

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