樹皮タンニンの機能解明と用途開発

タイトル 樹皮タンニンの機能解明と用途開発
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 大原 誠資
橋田 光
大村 和香子
発行年度 2000
要約 工場残廃材である樹皮の有効利用を図るため、樹皮に多量に含まれている縮合型タンニンの含有量、化学構造、ホルムアルデヒド吸着能、繊維素材への染色性を明らかにするとともに、抗菌繊維及び液状炭化物の調製法を開発した。
背景・ねらい 現在、日本の製材工場から年間約349万m3の樹皮が排出されている。排出される樹皮の一部は家畜敷料、堆肥、土壌改良材等として利用されているが、他の主な残廃材(背板、のこ屑等)と比べて未利用率が高く、発生樹皮の多くは焼却または棄却されている。近年の廃棄物処理に対する規制の強化から焼却処理そのものが困難になってきており、樹皮の有効利用法の開発が重要かつ緊急な課題となっている。本課題では、モリシマアカシア、ヤナギ、ヒバ等の樹皮に多量に含まれる縮合型タンニンの化学特性及び有用機能を明らかにすることにより、樹皮の用途開発に資することを目的とする。
成果の内容・特徴 多くのアカシア属樹木は樹皮に多量のタンニンを含有しているが、特に九州産のモリシマアカシアの樹皮には、30%を越える多量のタンニンが含まれていた。ヤナギ属樹木も一般にタンニンを多く含み、平均して16~19%のタンニン含有率を示した。カラマツ、ヒバ等の針葉樹樹皮にもタンニンが7~8%存在しているが、スギ及びヒノキ樹皮のタンニン含有量は非常に少量であった(図1)。一般にカテキン類は、気中のホルムアルデヒドを吸着する作用を有する。特に分子内にガロイル基を有する緑茶抽出物には、強いホルムアルデヒド吸着能が報告されている。実際の住環境に近い濃度のホルムアルデヒドを発生源として吸着試験を行ったところ、エゾヤナギ樹皮タンニン及びアンモニアで気相処理したアカシア樹皮タンニンは、緑茶抽出物よりも効果的に気中ホルムアルデヒドを吸着した(図2)。樹皮タンニンは、住環境下で放散されるホルムアルデヒドのキャッチャー剤としての利用が可能である。

モリシマアカシアの樹皮抽出物と各種繊維素材を水中で加熱すると、ナイロン、絹、羊毛等のタンパク系繊維は抽出物中のタンニンで容易に染色される。タンニンで染色したナイロン布には、アンモニアに対する消臭作用が認められた。また、タンニンで染色した後に銅イオン処理したナイロンは、大腸菌に対して顕著な抗菌活性を示した(表1)。

木質系炭化物とアカシアマンギウム樹皮タンニン水溶液(濃度5%)を激しく撹拝しながら混合すると、液状炭化物が調製できる。得られた液状炭化物を単板等の木質材料に塗布、風乾すると、炭化物が単板上に固定化し、安定な炭化物膜が形成される(図3)。本方法で炭化物を固定化した木質材料は、ホルムアルデヒド吸着能や電波遮蔽能を示した。

なお本研究は、農林水産技術会議大型別枠研究「新需要創出のための生物機能の開発・利用技術の開発に関する総合研究」による。
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図表2 212519-2.gif
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カテゴリ 土壌改良

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