関東地方の遺跡出土材の識別による木材利用史の解明

タイトル 関東地方の遺跡出土材の識別による木材利用史の解明
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 能城 修一
発行年度 2000
要約 関東地方の遺跡から出土した木材の樹種を識別し、過去の木材利用の実態を解明した。縄文時代以降、各時代の文化的および社会的な条件を反映して、時代ごとに特徴的な樹種選択が行われてことが、明らかになった。
背景・ねらい 関東地方における遺跡出土木材の研究は1980年代から本格的に展開されるようになり、埼玉県の寿能泥炭層遺跡や赤山陣屋跡遺跡、お伊勢山遺跡、東京都の中里遺跡や袋低地遺跡など、縄文時代や古墳時代などを中心として、木材利用の実態が解明されてきた。しかしまだ研究された地点は関東地方の中央部に限られており、弥生時代の出土例がまったくないなど調査地点および時代が限定されていた。そこで調査地点をふやして地域や時代ごとの違いを比較し、関東地方における過去の木材利用の全体像をとらえることを目的とした。
成果の内容・特徴 遺跡出土の木材には、人間の加工が明らかな木製品と遺跡周辺の樹木がそのまま埋まった自然木とがあり、両者を比較することによって、当時の木材資源利用を解明することが可能となる。縄文時代の関東地方中央部では、谷はヤチダモやハンノキ属からなる湿地林によって覆われていた。台地上にはクリやケヤキ、ナラ類(コナラ属コナラ節)などの落葉広葉樹林が広がり、潜在自然植生とされている照葉樹林はほとんど平野内には成立していなかった。縄文時代の木材利用は、青森県の三内丸山遺跡と同様に、関東地方でも圧倒的にクリに傾いており、木道や水場などの杭や板として広汎に利用されていた(表1)。クリの他は、板や割材にナラ類やヤマグワ、トネリコ属が使われ、丸木弓にはイヌガヤが使われていた(表1)。このように縄文時代にはすでに明瞭な樹種選択が行われていた。弥生時代の関東地方南部では、鍬鋤を中心としてカシ類(アカガシ亜属)がもっとも普遍的に利用され、地域によってカヤやイヌガヤ、ケヤキ、クスノキ、サカキ、トチノキなどが用いられていた(表3)。用途別にみると、カシ類の鍬鋤のほかは、容器としてのケヤキとクスノキ、柄としてのサカキなどが特徴的である。鍬鋤にカシ類を用いるのは西日本に共通する傾向で、単に関東地方南部に照葉樹林があるということだけでなく、文化的な背景による樹種選択であると考えられる。古墳時代となると、鍬鍬のカシ類のほかは、クヌギ類(コナラ属クヌギ節)の使用が関東地方の中央部では一般的となり(表1)、南部ではカヤ、モミ属、スギ、ヒノキといった針葉樹が選択された。それ以降でまとまった資料があるのは近世の江戸で、この時代になると、運材・加工技術および流通体系の確立を背景として、江戸には様々な材木および木工品がもたらされ、その結果、関東地方には生育していない様々な樹種が遺跡出土材のなかに見出されるようになった(表2)。
図表1 212521-1.gif
図表2 212521-2.gif
図表3 212521-3.gif
図表4 212521-4.png
図表5 212521-5.png
図表6 212521-6.png
カテゴリ 加工 くり

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