タイトル | 森林火災が発生する危険度の評価には、落葉層の含水率推定が重要である |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
玉井 幸治 深山 貴文 後藤 義明 吉武 孝 |
発行年度 | 2001 |
要約 | 林内微気象データから、林床可燃物の含水率を予測するモデルを開発した。京都府南部の常緑・落葉樹混交林と落葉広葉樹林を対象にモデルの検証を行った結果、林相ごとに予測することが可能となった。 |
背景・ねらい | 森林火災では、林床に堆積している落葉などが最初に燃え始め、次第に樹木の幹や枝に付いている葉に燃え移る。このことから、森林火災の発生危険度の評価には、落葉層含水率を判定することが重要であると考える。現在、気象観測データに基づいて、「いつ森林火災が発生しやすいのか」の判定を行っているが、具体的に「どこの森林が危険であるのか」を判定することはできない。 そこで森林の状態に関する情報と気象観測データに基づいて、林分別に落葉層含水率を推定することで「いつ、どこの森林が危険であるのか」を判定することが可能になり、森林利用の制限など、効率的な対策を講じることが可能になると期待される。そのためにはまず、林内気象の観測データから落葉層含水率を推定するモデルを開発する必要があり、京都府南部の落葉樹林と常緑・落葉混交林を対象に、林内日射量と降水量データから落葉層含水率を推定するモデルの開発を行った。 |
成果の内容・特徴 | モデルの概要を図1に示した。落葉層をバケツに仮想すると、バケツに溜まっている水量が落葉層の含水率に相当し、林床に降る雨は一旦バケツに溜まる。バケツからあふれた水は、鉱質土壌へと流下する。一方、林内日射量に応じて水分は蒸発し、その分、バケツの中の水量は減少する。 蒸発量と日射量の関係を求めるため落葉層の含水率を4段階に分け室内実験を行った結果、蒸発量と日射量には比例関係が成立することがわかった(図2a)。さらに比例関係式の傾きは落葉層の含水率とともに増加し、含水率が180%以上になると、傾きは一定となった(図2b)。この関係を数式で示すと次のようになる。 この式で計算されたyの値に相当する含水率をθから減じることにより、その時間における新たな含水率θの値を算出する。 このモデルを用いて、落葉樹林(京都府相楽郡山城町北谷国有林)と常緑・落葉樹混交林(京都市銀閣寺国有林)の落葉層含水率の推定計算を行った。森林の混み具合を示す胸高断面積合計は、北谷国有林では常緑樹6.29m2ha-1、落葉樹で13.31m2ha-1、銀閣寺国有林では常緑樹15.82m2ha-1、落葉樹12.46m2ha-1であった。林内の明るさと関係する開空度は、北谷国有林では夏に15.0%、冬に50%、銀閣寺国有林では夏に13.3%、冬に23.0%であった。 経験的に落葉層の含水率が20%以上の場合には燃えないと言われているので、含水率が20%以下となる日の発生割合を月別に計算し(図3a)その結果、両方の森林とも含水率が20%以下となる日の発生割合は春に多いことがわかった。これは京都府南部・奈良県北部で森林火災発生件数が多い時期と一致し(図3b)、開発されたモデルの有効性を意味する。また常緑・落葉樹混交林では、春以外には含水率が20%以下となる日は皆無であったのに対し、落葉樹林では1、11、12月を除いて1年中含水率が20%以下と推定される日があった。このことから、林相のタイプによって林野火災の発生危険度が異なり、開発されたモデルはそれを判定することができることがわかる。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
図表6 | |
図表7 | |
図表8 | |
カテゴリ |