ホウ素によるペクチンの架橋が植物の成長に必須である

タイトル ホウ素によるペクチンの架橋が植物の成長に必須である
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 石井 忠
松永 俊朗
林 徳子
発行年度 2001
要約 植物の必須元素であるホウ素は、細胞壁の中のペクチンを架橋している。ホウ素が欠乏するとペクチンの架橋が起こらないので、組織は脆くなるなど、ホウ素の生理学的役割を明らかにした。
背景・ねらい 樹木の成長は、形成層組織で誕生した細胞が、まず伸長して体積が増加する段階と、次に細胞壁が肥厚し木化する段階からなり、このいずれの過程でも、細胞壁を構成するペクチンが重要な働きをしている。我々はこれまで、2分子のペクチン性多糖ラムノガラクツロナンⅡ(RG-Ⅱ)が1分子のホウ酸により架橋されている、RG-Ⅱ-ホウ酸2量体(dRG-Ⅱ-B)が細胞壁に存在することを明らかにした。この架橋構造は、単子葉植物(タケやササなど)、双子葉植物(広葉樹を含む)や裸子植物(マツやスギなど)を含む種子植物では同じ形をとっていた。そこで、RG-Ⅱ-ホウ酸2量体の細胞壁中での機能を明らかにすることを目的として、発芽率が高く、成長が早いカボチャを材料に用いて研究を行った。
成果の内容・特徴 発芽したカボチャをホウ酸(10μM)を含む培地で1週間水耕した後、ホウ酸を含まない培地(B(-)培地)に移し、さらに1週間水耕した。B(-)培地で栽培した第2葉~4葉は、ホウ酸を十分に含む培地(B(+)培地)に比べて約半分の重さ(生重量)であり、ホウ素欠乏症状を示した。また、第2~4葉では葉に含まれるホウ素の90%以上が細胞壁に存在した。

細胞壁をペクチン分解酵素で加水分解し、分解物をサイズ排除クロマトグラフィーにより分析したところ、B(+)培地で栽培した葉では、ラムノガラクツロナンⅡ (RG-Ⅱ)は90%以上がホウ酸2量体(dRG-Ⅱ-B)として存在していた。それに対して、B(-)培地の第2~4葉では、RG-Ⅱの80~90%が単量体であった(図1)。このことは、B(-)培地で育てたカボチャの第2~4葉ではホウ素が不足しているので、RG-Ⅱはホウ酸と結合できなかったことを示している。

B(-)培地で1週間栽培したカボチャを、ホウ素の安定同位体10Bを存在比95%まで増やしたホウ酸を含む培地へ移すと、葉や細胞壁の10Bの割合が経時的に増加した(図2)。また、細胞壁中ではRG-Ⅱがホウ酸と結合して、dRG-Ⅱ-10B割合が増加した。なお、ホウ素は誘導結合プラズマ発光分析法により定量した。

透過電子顕微鏡による観察の結果、B(-)培地で栽培されホウ素が欠乏した細胞壁は、B(+)培地で栽培されホウ素が十分なものに比べて膨潤しており、細胞の接着面である複合中間層が濃く染色された(図3)。しかし、B(-)培地で栽培後、B(+)培地に移すと、5時間で細胞壁の厚さはB(+)培地のものとほぼ同じ厚さまで収縮した。膨潤した細胞壁は骨粗鬆症の骨のように脆く折れやすいので、組織を支えることができない。このように、細胞壁中でのRG-Ⅱ-ホウ酸複合体の生成によるペクチンの架橋により、細胞壁の力学的強度が正常に保たれることを示した。

なお、本研究は交付金プロジェクト研究「形態・生理機能の改変による新農林水産生物の創出に関する総合研究」による。
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カテゴリ かぼちゃ

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