タイトル | ブレーキ付き刈払機の開発 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
鹿島 潤 佐々木達也 陣川 雅樹 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 緊急ブレーキ付きの刈払機を開発し、操作性を従来型の刈払機と比較した結果、新装置の付加にともなう重量増は作業効率や操作性に影響なく、安全性を向上させる実用性が示された。 |
背景・ねらい | 刈払機は農業用として約100万台、林業用として約30万台以上が普及している他に、造園業その他の産業で用いられるものや家庭用に普及しているものまで含めると相当の台数が普及しているが、様々な作業現場で事故が発生している。特に林業では、作業中の転倒や滑落の場合に回転する刈刃が作業者自身を傷つけたり、不注意や予想外の事態から作業中の同僚を傷つけたりする例が多く報告されており、毎年数件の死亡事故が発生している。 これまで市販されてきた刈払機は、刈刃の回転を強制的に止める機構を備えていないことから、スロットルを戻してエンジン回転数を落としても刈刃が惰性回転を続ける構造となっており、作業の現場からは安全性を向上させるために刈刃の回転を止める機構を備えた刈払機が求められていた。そこで、スロットル操作用レバーから手を放すと刈払機のシャフト回転を強制的に止めるブレーキ機構を備えた刈払機を開発した。 |
成果の内容・特徴 | 開発機の外観(図1)は、エンジンカバーに若干のふくらみができたことを除くと従来型の機械とほぼ同じである。また、重さも百数十グラムの増加に抑えることができた。 この機械では、スロットル操作用レバーとしてトリガー式を採用し、手を放せばすぐにアイドル状態に戻るようになっている。図2のようにレバーを握っていないときは、ブレーキが利いた状態となる(この状態を初期状態とする)。初期状態からレバーを握るとクラッチドラムとそれに密着していたブレーキバンドのあいだに隙間ができ、摩擦力が無くなりブレーキが解除される。その後、エンジン回転数が上がるとクラッチが繋がり、シャフトが回転して刈刃も回転する。逆に、刈刃が回転しているときにレバーから手を放すと、ブレーキバンドがクラッチドラムに当たってブレーキがかかり、シャフトの回転は止まる。このとき、急に手を放すと、クラッチが繋がった状態でブレーキが働き始め、クラッチが切れて回転が止まれば初期状態に戻る。ゆっくり手を放すと、クラッチが切れた後にブレーキが利き始め、回転が止まった後に初期状態に戻る。 刈刃の回転を止めるのに必要な時間はバネの強さなどを調整して変えることができるが、刈刃が高速回転していても4秒以内で止めることができる(図3)。ブレーキ機構がない刈払機(図4)と比較すると1/10以下の時間で止められることになり、転倒や滑落時など、速やかに刈刃の回転を止めなければならない危険が生じたときにブレーキは非常に有効である。 実際の林地で下刈り作業を行った結果、開発機の作業効率、操作性共に従来機と変わらないこともわかった。 今回開発した仕様の刈払機を使えば、手を刈払機から放すと数秒以内で刈刃の回転が止まるので、作業者が刈刃と接触することによる大怪我や大事故の発生を未然に防止する効果が期待できる。さらに、スロットル操作用レバーを握らない限り刈刃が回転しないため、エンジン始動時や移動時などでは不必要に刈刃が回転しない。したがって、不注意によるヒヤリハットや刈刃接触事故も未然に防ぐことができるなど、本開発機の使用によって刈払い作業の安全性が大きく向上し、労働災害の防止が期待できる。 なお、本開発は(株)共立との共同研究の成果であり、林業・木材製造業労働災害防止協会実施(林野庁委託)「平成13年度林業労働災害防止機械・器具等開発改良事業」による。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
図表6 | |
図表7 | |
図表8 | |
カテゴリ | くり |