西南日本では強風がどこでどれくらい吹いているか

タイトル 西南日本では強風がどこでどれくらい吹いているか
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 齊藤 哲
小南 陽亮
発行年度 2003
要約 台風常襲地域の西南日本において森林管理上の強風対策をたてるため、強風の発生頻度を広域的に推定した。九州北部と南部とでは大型台風の頻度に較差がみられ、それに合わせた強風対策が必要であることを示した。
背景・ねらい 西南日本では台風が頻繁に通過し、これまで大きな林業被害が数多く生じてきました。西南日本で森林経営を行うには、強風による林業被害をいかに回避、軽減させるかが重要です。そのためには、被害の発生程度や強風の発生頻度に関する情報が必要となります。林業被害については、多くの調査事例がある反面、強風の発生頻度については、解析例が少なく十分な情報が得られていません。そこで、西南日本の各気象台(32地点)で観測されたデータをもとに、ある強さ以上の風が何年に一度の割合で発生するかを推定し、強風頻度の広域的特徴についてまとめました。
成果の内容・特徴 強風が何年に一度の頻度で発生するかという発生頻度推定値(小さい値ほど強風頻度が高い)を、統計的処理を用い主観による誤差を排除して算出するため、従来から用いられている方法で強風の発生確率を表す曲線を求めました。その結果、図1のように、得られた曲線はすべての地点で実際の強風の頻度分布によく適合しました。つまり、この曲線式を解析することによって発生頻度推定値を高い信頼性で算出できることが判りました。

ちょっと強い風の起こりやすさ

瞬間風速30m/s以上の強風はすべての地点で少なくとも12年に一度の頻度で発生していました。そして外海(日本海・東シナ海・太平洋)に面している地域は、内陸および瀬戸内の地域よりも頻度が高い傾向でした(図2)。日本海沿岸部や九州・四国の南部では少なくとも4年に一度、枕崎以南の南西諸島では少なくとも2年に一度発生しています。日田では11.8年に一度の頻度であり、この地域を中心とする九州北部の内陸部が強風発生頻度の低い一帯でした。浜田、下関、萩では台風シーズン以外(12月~4月)に瞬間風速30~40m/sの記録が多くみられ、日本海沿岸部で強風頻度が高いのは台風よりもむしろ瞬間風速30m/s台の冬の季節風が関与しているようです。

もっと強い風の起こりやすさ

瞬間風速50m/s以上の強風は、3年に一度以上発生する地点から200年以上発生しない地点まで幅広くみられました(図3)。瞬間風速50m/sの強風が少なくとも10年に一度の頻度で発生するのは室戸、枕崎、屋久島、那覇、石垣の5地点、また80年以上発生しないのは熊本、大分、日田、佐賀など九州北部を中心とした12地点でした。瞬間風速50m/sの強風が発生する頻度は概して南にいくほど高く、特に九州本島では北緯約32度30分を境に、その南北で発生頻度推定値に20年以上の格差がみられ、九州の北部と南部とで大きく異なっていました(図4)。
現時点では個々の林分レベルのような局所的な風害発生の予測は容易ではないため、ある程度広域的なスケールに立った予測のもとで、森林をどう扱っていくか(森林施業といいます)考えざるをえません。森林施業の計画は自然条件、経営方針、社会の要請などの要因を考慮した上で決定されるべきであり、本研究はそのうちの自然条件のひとつを明らかにしました。ここで示した強風頻度の分布傾向に応じて主伐期をいつにすべきか、延ばすべきかなど強風に対するリスク管理を地域ごとに考えていくことが重要です。

詳しくは:齊藤哲・小南陽亮(2004)日本林学会誌86(2): 105-111. をご覧下さい。
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カテゴリ 経営管理

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