タイトル | イオウを貯める土・貯めない土−イオウが多い日本の土壌のナゾ− |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
谷川 東子 高橋 正通 吉永 秀一郎 今矢 明宏 |
発行年度 | 2003 |
要約 | 酸性雨に含まれるイオウは土壌中でどのような運命をたどるのか。我が国に広く分布する火山灰土壌は欧米の土壌に比べ著しく多量のイオウを貯め込んでいた。その現状と貯める仕組みを明らかにした。 |
背景・ねらい | 産業革命以降、化石燃料の消費によって大量のイオウが大気に放出されてきました。イオウを溶かし込んだ酸性の雨が降ると、土壌の酸性化が進み最終的には生物に有害なアルミニウムが土壌から地下水などに溶け出します。ただし、酸性化の進み方は土壌の種類によって異なり、イオウが土壌に蓄積保持されるとその影響が緩和されることが、欧米の研究からわかってきました。今後イオウ発生量の増加が予想されるアジアでは、酸性雨に含まれるイオウ化合物が土壌中でどのような運命をたどるのかを予測することが求められています。そこで日本の森林土壌はどの程度の量のイオウ化合物を現在貯めているのか、またその貯める能力を左右している土壌の性質について調べました。 |
成果の内容・特徴 | AndisolsとInceptisols日本は火山国なので、主に火山灰によってできている土壌、Andisols(米国土壌分類名。黒色土などに相当)が広く分布しています。この土は鉄やアルミニウムの酸化物を多く含むため、土壌表面はプラスの電気を帯びてマイナスイオンを吸い付けるなどユニークな性質を持っています。本研究はこのAndisolsと日本に最も広く分布するInceptisols(主に褐色森林土に相当)のイオウ現存量を調べ、土壌の性質との関係を解析しました。Andisolsがイオウを貯えるしくみ調査の結果、AndisolsはInceptisolsに比べ、著しく大量のイオウを貯えていることが明らかになりました(図1)。そのイオウの多くは、エステル態イオウ(図2)と硫酸イオンでした。この2つのイオウ化合物はそれぞれアルミニウムと鉄の酸化物に保持されていると考えられます(図3)。これまで不安定で分解されやすいと考えられてきたエステル態イオウは、酸化物と共存することで分解しにくい性質になっていると推察されました。またAndisolsではアルミニウムや鉄の酸化物が多く含まれているので、Inceptisolsと同じ量のイオウが土壌から入っても、土壌から流亡するイオウ量は少ないと考えられます(図4)。結果からいえること日本では酸化物含有率が高いAndisolsが広く分布するので、イオウの動きを予測するための循環モデルの作成には酸化物量を考慮する必要があります。また酸化物量を考慮したイオウ蓄積のメカニズムやイオウ循環モデルは、Andisolsと同じくプラスの電気を帯びる性質があるOxisolsやAlfisolsといった熱帯や亜熱帯の土壌についても応用できるものと期待されます。本研究は、環境省地球環境研究総合推進費「流域の物質循環調査に基づいた酸性雨による生態系の酸性化および富栄養化の評価手法に関する研究」により行いました。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
図表5 | ![]() |
図表6 | ![]() |
図表7 | ![]() |
図表8 | ![]() |
カテゴリ | 亜熱帯 |