タイトル | 複雑な地形にある森林の二酸化炭素収支の計測 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
小南 裕志 深山 貴文 玉井 幸治 後藤 義明 |
発行年度 | 2003 |
要約 | 尾根、谷に囲まれた複雑な地形にある森林で乱流変動法によるCO2交換量の観測を行う場合、風のない夜間の呼吸量の測定が困難であることが分かった。そこでチャンバー法を併用することによって精度向上をはかった。 |
背景・ねらい | 近年、温暖化などの地球環境の変動にともない主要な温室効果ガスであるCO2の吸収-放出収支の測定が重要視されています。その中で大きなCO2の吸収源と考えられる森林は重要な観測対象です。一般に森林におけるCO2吸収量の測定値は、森林の樹冠上に設置された気象観測タワーで、風速とCO2濃度の高頻度連続測定を行う乱流変動法と呼ばれる方法によって得られています。この方法は地形が平坦でさらに、大気と森林の間の空気がよく混ざることを基本的測定条件としています。しかし、日本の森林の多くは地形が平坦ではなく山間部に存在していることが多いために、この方法についてさまざまな問題点が指摘されています。 そこで本研究では複雑地形上に存在する森林で乱流変動法によるCO2交換量観測を行った場合におきる現象とその問題点について、葉群や土壌から出入りするCO2を直接測定する方法と比較して検討しました。 |
成果の内容・特徴 | 山でCO2を測るむずかしさ森林では植物の光合成によってCO2を吸収する一方、植物自身による呼吸や枯れた植物が分解されることなどによってCO2が放出されています。樹冠上のタワー観測ではそれらが合わされた森林全体としてのCO2交換量の観測を行っています。しかし、この方法は風速などの気象的な要因の影響を受けるために、うまく観測ができていない場合を見分けたり、地形環境や気象条件によって必要となる補正の程度を決めたりすることが比較的難しいとされています。タワー法チャンバー法の比較そこで、京都府南部に位置する山城試験地で(図1)、気象観測タワーを用いた乱流変動法によるCO2交換量観測と並行して、チャンバー法による土壌呼吸と葉群のCO2交換量の連続観測を行い(写真1、2)タワー観測と比較しました。これは葉群や土壌表面を一定時間(1時間に数分程度)チャンバーと呼ばれる箱で覆い、その間の箱の中のCO2放出(吸収)量をガスアナライザーで測定することによって、CO2交換量を測定する方法です。図2、3はタワー観測とチャンバー法から推定されたCO2交換量の例で、図2は夜間に風が強く森林と大気の間の輸送が良好に行われていた場合で、図3は逆に夜間に風が弱く森林と大気の間でCO2の輸送があまり行われていなかった場合です。どちらの場合でも日中はタワー観測とチャンバー観測の値は良好な関係を示しています。しかし夜間、風が弱くて空気があまりまざらない場合(図3)にはタワー観測によるCO2吸収量は明らかに値が小さくなっており、午前1時くらいから夜明け前にかけてはほとんど呼吸量の観測値がゼロになっています。 タワー測定では適さない気象条件これは風が弱く、また地表の冷却が進んで地表近くの方が空気の密度が高くなると、この試験地のような地形では、呼吸によってCO2が発生してもそれは谷筋を伝ってより低い位置へと流れてしまい、タワー上部では呼吸活動を測定できないためと考えられます。このことをふまえて、タワー観測に適さない時の気象条件を特定し、その時に実際に起きているCO2交換量の妥当な推定を行うことによって、このような複雑地形上に存在する森林でのCO2交換量の、より高精度な測定が可能になりました。本研究は本所交付金プロジェクト「CO2フラックス観測の深化とモデル化による森林生態系炭素収支量の高度評価」により行いました。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
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図表6 | |
図表7 | |
図表8 | |
図表9 | |
図表10 | |
カテゴリ | 輸送 |