超臨界水及び亜臨界水処理による木質資源の高速糖化

タイトル 超臨界水及び亜臨界水処理による木質資源の高速糖化
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 松永 正弘
松井 宏昭
山本 誠一
大塚 剛樹
清水 孝浩
発行年度 2003
要約 環境負荷の小さい超臨界水及び亜臨界水処理法を用い、木質資源からバイオエタノールの原料となるグルコースやオリゴ糖などの糖類を高速かつ高効率で生産する方法を開発した。
背景・ねらい 私達が大量に使用し続けている石油や石炭といった化石資源は、将来の枯渇が予想されていることに加えて、燃焼したときに放出される多量の二酸化炭素により地球温暖化をもたらしています。これに対し、森林から生み出される木材などは再生産が可能な循環型資源であり、しかも大気中の二酸化炭素から光合成によって再生産されるため、化石資源の代わりに木質資源を使うことで二酸化炭素の排出削減に大きく貢献することができます。そのため、木質資源からエネルギー源や化学原料等を製造する技術開発が現在強く求められています。
木材成分の約7割はセルロースやヘミセルロースといった多糖が占めていますが、この多糖を単糖・オリゴ糖に分解できれば、石油や石炭に代わるエネルギー源として期待されているバイオエタノールの原料として利用することができます。そこで、木材から単糖・オリゴ糖を大量かつ高効率で生産することを目的に、超臨界水及び亜臨界水処理(*) による高速糖化法の技術開発を行いました。

(*) 水の温度・圧力を374℃・22MPa(218気圧)まで上げると、液体でも気体でもない状態となります。この温度・圧力を臨界点と言い、臨界点以上の状態の水を超臨界水、臨界点よりやや低い温度の水を亜臨界水と呼びます(図1)。超臨界水や亜臨界水は、木質バイオマス成分をはじめとした有機物が格段に溶けやすくなり、有機物をすばやく低分子まで分解します。しかも、超臨界水処理や亜臨界水処理は水と熱のみを利用したクリーンな反応ですので、環境に配慮した技術として注目されています。
成果の内容・特徴

スギ木粉での処理

写真1、図2に示すような装置を用いてスギ木粉を超臨界水もしくは亜臨界水処理しました。その結果、反応液中にはグルコースやオリゴ糖などの水溶性糖類が多量に生成していることが確認されました(図3)。特に、亜臨界域である310~320℃・25MPaの処理条件において、セルロース及びヘミセルロースから7割近くの高い糖収率が得られました。処理時間も、反応器の温度が310℃に達してから約10分という短時間で分解反応が終了しており、木質バイオマスから高速で大量に糖類を生産できることがわかりました。また、糖類に変換できないリグニン成分(木材成分の約3割)の一部は残渣として回収されましたが、その残渣は石炭に匹敵する高い発熱量(約6,500cal/g)をもっているので、熱源としての利用が期待されます。

この方法の特徴

木材の糖化法には、酸や酵素を用いた方法もありますが、酸糖化は酸による処理装置の腐食や廃液処理などの問題があり、酵素糖化は時間がかかることやリグニン除去の前処理が必要であるなどの問題があります。今回技術開発した超臨界水及び亜臨界水処理は、酸触媒や特別な前処理が必要なく、廃液処理の問題もなく、オリゴ糖を含めた糖類全体を高速かつ大量に生成する手段として非常に優れています。

バイオエタノール生産へ

そこで酵素糖化の前処理として超臨界水あるいは亜臨界水処理を用いてバイオエタノールの原料となる糖類を生産し、その後、短時間の酵素反応で単糖、そしてエタノールに変換するという方法により、バイオエタノールが高速で生産できることになります(図4)。今後は、水の使用量を減らすことで水を加熱するために必要なエネルギーやコストを削減し、実用化に向けた開発を進めていく予定です。

本研究は、農林水産技術会議委託費(農林水産バイオリサイクル)「超臨界水及び亜臨界水処理による高度資源化技術の開発」により行いました。
なお、本成果は特許出願中です。
図表1 212595-1.gif
図表2 212595-10.png
図表3 212595-2.jpg
図表4 212595-3.gif
図表5 212595-4.jpg
図表6 212595-5.jpg
図表7 212595-6.png
図表8 212595-7.png
図表9 212595-8.png
図表10 212595-9.png
カテゴリ くり コスト

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる