タイトル | 木材の燃焼によって生成するダイオキシン類 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
河村 文郎 池田 努 細谷 修二 |
発行年度 | 2003 |
要約 | 小型焼却炉を用いてスギの燃焼試験を行った結果、バッチ式の方が連続投入方式よりも、また、無機塩素添加材の方が未処理材よりもダイオキシン類生成量が増加した。 |
背景・ねらい | 我が国ではゴミ焼却炉がダイオキシン類の主要な発生源であるといわれており、焼却炉からの排出が厳しく監視されるようになりました。ダイオキシン類の生成は、燃焼温度と塩素が含まれていることが大きく影響するため、燃焼温度の低い小型焼却炉で主に発生するといわれています。しかし、木材関連業界では依然として簡易式小型焼却炉への依存度が高く、また、海水中に貯木した材では発生が多くなることも予想されます。 本研究は各種木質材料を小型焼却炉で燃焼する際のダイオキシン類生成量を把握し、安全性を評価することを目的としました。また、塩化ナトリウム及び塩化アンモニウム添加の木材の燃焼試験を行い、ダイオキシン類生成量を測定し、さらに、スギの塩素濃度の個体差について検討し、水中貯木材や未処理材の燃焼に対して有用な知見を得ました。 |
成果の内容・特徴 | 焼却炉での試験約20kg/hの処理能力を持つ焼却炉を用いて実証試験を行いました。一次燃焼室において700℃で燃焼を行い、二次燃焼室 (アフターバーナー)では900℃で燃焼を行いました。二次燃焼室はダイオキシン類等の分解を行うために設けられています。まず連続投入方式での燃焼によって無機塩素添加材と無添加木材の比較を行いました。塩化ナトリウム(NaCl) 添加材 (添加量、5000ppm) や塩化アンモニウム (NH4Cl) 添加材 (添加量、1000ppm)では無添加材と比べて著しくダイオキシン類生成量が増大しましたが、二次燃焼によって大部分が分解されました (図1A)。 業界が使っている焼却炉では次に木材関連業界での使用率が高いバッチ式小型焼却炉での燃焼を想定した燃焼試験を行ってみました。これは一次燃焼室に予め被燃焼材料を全量入れた後に着火し、燃焼を行うため、ダイオキシン類の生成し易い温度域を必ず通過することになります。無添加材の場合もバッチ式のような悪条件で燃焼するとかなりダイオキシン類生成量が増大することが確認されましたが、排出規制値 (5ng-TEQ/Nm3) は越えませんでした(図1B)。連続投入方式と比較してバッチ式では、二次燃焼によるダイオキシン類の分解が効率良く行われていません。バッチ式による材部チップと樹皮では、ダイオキシン類生成量に差は現れませんでした(図1C)。スギの塩素濃度スギの塩素濃度の個体差について調査した結果、樹皮の方が材よりもやや高い値を示しました(図2)。材部では塩素量の個体差が大きく、塩素量の最も多かった個体は平均的な塩素含有量の約10倍の塩素を含んでいました。しかし、水中貯木材の約1/10なので、このような塩素含有率の特に高い個体を燃焼する場合も、塩化ナトリウム添加材(塩素含有量、 5000ppm)を燃焼した時のダイオキシン類生成量を越えることはないと予想されます。本研究は、農林水産技術会議委託研究費「農林水産生態系における有害化学物質の総合管理技術の開発」により行いました。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | 管理技術 |