タイトル | デシケータ法を利用した建材からのアセトアルデヒド放散量の簡易測定法 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
塔村 真一郎 井上 明生 宮本 康太 |
発行年度 | 2003 |
要約 | デシケータ法を利用して木質建材からのアセトアルデヒド放散量を測定する簡易法を開発した。本法は、非ホルムアルデヒド系接着剤を用いた建材にも適用することができる。 |
背景・ねらい | いわゆるシックハウス問題に対する具体的な対策として、平成15年7月に改正建築基準法が施行され、ホルムアルデヒドを放出する材料については使用制限が設けられることになりました。アセトアルデヒドについても平成12年に厚生労働省から室内濃度指針値(48μg/m3) が出されており、平成14年の国土交通省の住宅実態調査によれば約9%の住宅でアセトアルデヒドの室内濃度がこの指針値を超えていました。しかし、アセトアルデヒドの発生源の特定や建材からの放散挙動についてほとんど把握できていないのが現状であり、先ずは個々の材料から放散するアセトアルデヒドのデータを蓄積していくことが急務となっています。 建材から出るアセトアルデヒドの量を測る方法として、小形チャンバー法が規格化(JIS A1901) されていますが、装置が高価であり、測定に多大の時間を要することから、より簡便な測定法の開発が望まれています。 一方、合板のJAS規格などでホルムアルデヒド放散量試験として採用されているデシケータ法(JIS A1460) は、より簡便な方法ではありますが、現行の分析法ではアセトアルデヒドを測ることはできません。 そこで本研究では2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(2,4-DNPH)溶液と高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使い、デシケータ法を利用してアセトアルデヒドを簡便に定量する方法を開発しました。 |
成果の内容・特徴 | アセトアルデヒド定量法の確立デシケータ法とは木質建材などから放散されるホルムアルデヒドを密閉容器中で水中に捕捉させるしくみです(図1)。このとき水中にはホルムアルデヒドだけでなく、揮発性が高く水に溶けやすいアセトアルデヒドなどの化合物も同時に溶け込みます。水中に溶け込んだアルデヒド類は2,4-DNPH飽和溶液から調製した酸性アセトニトリル溶液と速やかに反応し、安定なヒドラゾン誘導体となります(図2)。これを高速液体クロマトグラフィー装置で分析すると、図3のように、ホルムアルデヒドと同時にアセトアルデヒドやその他のアルデヒド・ケトン類を分離定量することが可能となります。非ホルムアルデヒド系接着剤への適用本法はアセトアルデヒドの発生源となる可能性がある非ホルムアルデヒド系接着剤を用いた建材にも適用できます。一例として酢酸ビニルエマルジョン系接着剤を用いた合板からは微量ですが、アセトアルデヒドが検出され、接着剤から放散していることがわかります(図4)。つまり、本定量法を用いることで、非ホルムアルデヒド系接着剤を含めたデシケータ法の適用範囲を拡大することができるわけです。各種木質建材への適用市販の様々な木質建材をデシケータ法で測定し、得られたサンプル水に対して本分析法を適用した例を図5に示します。従来の分析法ではホルムアルデヒドしか測定できませんでしたが、本法によりアセトアルデヒドの定量が可能となりました。本法を用いて接着剤や建材から放散されるアセトアルデヒドに関するデータの蓄積が進むことが期待されます。本研究は、交付金プロジェクト「木質建材から放散される揮発性有機化合物の評価と快適性増進効果の解明」により行いました。 詳しくは:塔村真一郎 他(2003) 日本接着学会誌39(5):190-193. をご覧下さい。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
図表6 | |
図表7 | |
図表8 | |
図表9 | |
図表10 | |
カテゴリ | 簡易測定 シカ |