エノキタケ廃菌床の子実体形成促進物質-廃菌床の再利用に向けて-

タイトル エノキタケ廃菌床の子実体形成促進物質-廃菌床の再利用に向けて-
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 馬替 由美
大原 誠資
発行年度 2003
要約 エノキタケの廃菌床を4つの成分に分画し、エノキタケの色素脱色能を指標にして調べた結果、エノキタケが培地中に子実体形成を促進する何らかの物質を生産していることを明らかにした。
背景・ねらい エノキタケやシイタケなどの人工栽培は、木材に菌を接種してきのこを自然発生させる原木栽培から始まりました。しかし、今ではほとんどの食用きのこにおいて、オガ粉と米ヌカなどを混合した培地(菌床)を用いて瓶や袋で栽培する「菌床栽培」が行われています。エノキタケは、昭和30年代に施設内栽培が始まり、1990年代以降は年間生産量が11万トン(生産額461億円)を越えた国内で最も生産量の多い食用きのこです。現在は工場生産型の大規模生産が主流になっており、収穫したきのこの2倍の量生じる使用済み培地(廃菌床)の処理が大きな問題になってきています。エノキタケ栽培のもう一つの問題点は、子実体が奇形化したり、発生不良を起こしたりする「劣化」と呼ばれる現象が突発的に生じることです。
しかし最近になって、正常な子実体を収穫した後に、その廃菌床を新しい培地に添加して子実体形成不全株を培養すると、劣化が回復する現象が明らかになりました。このことは、エノキタケの正常株が培地中に子実体形成を促進する何らかの物質を生産していることを示唆しています。本課題では、エノキタケの廃菌床中に含まれる子実体形成促進物質を分析することを目的としました。
成果の内容・特徴

廃菌床の分画とBTBアッセイ

培地510gに廃菌床を80g添加して劣化株の栽培試験を行いました。その結果、廃菌床を添加すると明らかに子実体の発生が改善しました(写真1)。次に、正常株の廃菌床をメタノール抽出し、メタノール抽出物をさらにヘキサン抽出物(画分1)、酢酸エチル抽出物(画分2)、水可溶部(画分3)の3つに分けました。また、メタノール抽出残さからは、熱水抽出によって熱水抽出物(画分4)を得ました。今までに、色素ブロモチモールブルー(BTB)の脱色能力を指標にしてエノキタケの子実体形成能を判定する手法をすでに開発しています。そこで、廃菌床由来の4つの画分をそれぞれBTB入り培地に添加して、エノキタケ劣化株の菌糸を培養し、BTB脱色度が無添加の場合より高くなるものを検出しました。その結果、BTBの脱色能力を向上させるのは、画分4であることが明らかになりました(図1)(表1)。当画分にエノキタケの子実体形成を促進する物質が含まれると判断し、次の栽培試験を行いました。

栽培試験

画分4のBTB脱色試験では、0.05%から0.2%程度の濃度で劣化株のBTB脱色能力を改善する効果が認められましたので、栽培試験も0.05%で行いました。その結果、画分4を添加した培地で栽培したエノキタケは、収量も増え、品質の良いものになりました(写真2)。
以上、エノキタケの廃菌床中から、エノキタケのBTB脱色能力を上げる活性を持つ成分を分離することができました。さらに、分離した成分中に、実際の栽培で子実体形成を促進する物質が含まれていることを初めて明らかにしました。

本研究は、農林水産技術会議プロジェクト「連携実用化」により行いました。
なお、本成果は特許出願中です。
図表1 212603-1.jpg
図表2 212603-2.jpg
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カテゴリ えのきたけ しいたけ

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