人と森林の距離

タイトル 人と森林の距離
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 鹿又 秀聡
岡 裕泰
田村 和也
発行年度 2003
要約 1980年以降の人口動態と森林の分布について、既存の数値地理情報を用い、森林率別人口、森林までの距離別人口の点から分析を行い、多くの人は森林の近くに住んでいることがわかった。
背景・ねらい 日本の林野面積は約2500万haですが、この値は最近数十年ほとんど変わっていません。しかしながら、人口は「森林の多い山村で減り、森林の少ない都市で増える」という傾向です。人々が森林と、どのような距離関係で暮らしているのか知ることは、森林の環境保全機能・レクリエーション機能、森林管理の担い手問題を考える上で重要な情報となります。そこで、1980年以降の人口動態と森林の分布について、人口データとしては国勢調査の結果をメッシュ(約1km2のマス目)ごとに集計した地域メッシュ統計を、森林情報としては国土数値情報の森林情報を使用し、森林率別人口、森林までの距離別人口の点から分析しました。
成果の内容・特徴

森林率別人口分布

表1は、森林率と人口の推移を表したものです。日本には森林が存在しないメッシュが全体の約4.8%、森林率が90%以上のメッシュが約42%あります。2000年のデータを見ると、森林率が5%未満の地域(国土の10%)に全人口の約55%にあたる7000万人もの人が住んでいます。逆に森林率が70%以上の地域(国土の70%)には、3%の人しか住んでいません。1980年からの人口の推移をみると、人口減少の傾向がみられるのは、主に森林率が70%以上の地域であり、森林率が50-70%の地域においても最近10年間の人口は横這いです。

森林までの距離別人口

メッシュ内の森林率が90%以上の場合に、そのメッシュを森林と定義し、各メッシュから最寄りの森林と定義されたメッシュまでの距離(メッシュ間の距離は,重心から重心までの距離を計測)をそのメッシュ内に住んでいる人の森林までの距離として計算しました。全国の集計した結果が表2です。
今回の方法では、人から森林までの平均距離が約10kmとなり、全国の67%の人々が森林から10km以内にすんでいるけれども、2km以内に住んでいるのは11%だということ、そして森林から5km以内に住んでいる人の割合は徐々に低下しているということが分かりました。表3は関東地方の集計結果です。表2と比較しても分かるとおり、関東地方は全国の平均と比べて、約2倍の20kmも離れていることが分かりました。詳しく見ると、森林から20km以上離れたメッシュ面積の90%、30km以上離れたメッシュの98%以上が関東地方に集中していました。つまり、関東地方以外の地域では、ほとんどの場所から20km以内に森林が存在することになります。
図1は、人から森林までの距離の平均値を県別に色分けした地図です。予想されるように森林率が高い県は森林までの距離が近く、森林率が低い県では遠い傾向にあります。平均値が10km以上の県はすべて、森林率が50%以下の県でした。
しかし、京都府や広島県のように人口100万人以上の都市をかかえる県でも、森林までの平均距離が3km未満という県もあります。実際に京都を訪れた方なら、森林が近くにあり、周りを山で囲まれた環境にあると感じた人も多いのではないでしょうか。森林までの距離は人口規模よりも平野の広さと強い関係があるようです。
今回の結果から、ほとんどの人が自動車で30分も行けば森林がある環境に住んでおり、森林は我々にとって身近な存在であることが確認されました。しかし、森林率の高い地域や森林に近い場所に住んでいる人口の減少も明らかとなりました。今後の森林管理のために対策を検討する必要があります。

本研究は、交付金プロジェクト「森林・林業の資源的、社会経済的長期見通し手法の開発」の成果です。
図表1 212604-1.gif
図表2 212604-2.gif
図表3 212604-3.gif
図表4 212604-4.gif
図表5 212604-5.png
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カテゴリ くり シカ

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