樹木の細根は成長と枯死を繰り返す

タイトル 樹木の細根は成長と枯死を繰り返す
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 野口 享太郎
阪田 匡司
高橋 正通
溝口 岳男
発行年度 2003
要約 スギ人工林における細根の成長と枯死について解析した結果、細根の成長と枯死は両者ともに夏季に盛んで、1年間の細根成長量、枯死量は細根の平均バイオマスを大きく上回ると考えられた。
背景・ねらい 樹木の根は土壌から水や養分を吸収し、樹木の成長を支える重要な器官です。根はその成長に伴い炭素や窒素などの養分を固定しますが、逆に枯死して分解されると、土壌中へこれらの養分を放出します。特に細根(一般的に直径1mm以下または2mm以下の根のことを指す)は、養分を吸収する能力が高く、環境の変化に敏感で枯死しやすい性質を持っています。また、樹木が光合成により大気から吸収した炭素の数十%が細根に利用されているとも言われ、森林の物質循環に対して大きな影響を与えていると考えられます。このように、樹木の根は森林生態系において様々な機能を持つと考えられていますが、土壌中の根の調査は技術的に難しいため、解明すべき問題が多く残されています。そこで本研究では、細根の成長量と枯死量を明らかにすることを目的として、以下の調査を行いました。
成果の内容・特徴

ミニライゾトロン法

森林総合研究所・千代田試験地のスギ林(23年生)において、ミニライゾトロン法(地中に埋設した透明な管の表面に出現する根を観察する方法;図1)により、土壌中(深さ0-40cm)の細根を3週間に1度の間隔で観察し、写真1に示すような画像を得ました(各画像のサイズは1.3cm×1.9cm)。得られた画像中の個々の細根(本研究では直径1mm以下)について、長さと直径を画像処理ソフトウェアにより測定し、細根の長さや直径が増大した場合を「成長」、前回の観察で見られた細根が消失した場合を「枯死」として記録しました。また、ミニライゾトロン法による観察では細根の重量が分からないため、一定体積の土壌を採取して、その中に含まれる細根の重量からこのスギ林の単位面積あたりの細根重量を求めました。

細根の成長と枯死量

これらの二つの手法で得られた結果を合わせて細根の成長量と枯死量を算出した結果、細根の成長量は夏季に大きく冬季に小さいことが明らかになりました(図2)。また、細根の枯死量も成長量と同様の季節変化を示し、夏季に大きく冬季に小さいことが分かりました(図2)。これらの結果は、細根の成長と枯死の両方が、季節に伴い変化する温度などの環境要因の影響を強く受ける可能性を示しています。
また、観察を行った1年間の細根バイオマス(生きている細根の量)の平均値と細根成長量・枯死量を算出した結果、細根バイオマスの約3倍の細根が1年間に成長し、ほぼ同量の細根が枯死することが示されました(図3)。このことは、発生した細根の多くが数ヶ月以内に枯死し、土壌中の細根が1年間に3回程度入れ替わることを示しています。また、成長量と枯死量がほぼ等しいことから、長期的な視点で見ると、このスギ林の細根バイオマスはほとんど増加しないと言えます。
以上の結果から、このスギ林では大量の細根が成長しては枯死するサイクルが繰り返されていると考えられます。成長と枯死が同時に起こることから、見かけの細根バイオマス自体の変化は小さいようですが、細根が消費するエネルギーや資源の量は、私たちが想像していたよりもずっと大きいのかもしれません。
図表1 212606-1.gif
図表2 212606-2.jpg
図表3 212606-3.gif
図表4 212606-4.gif
図表5 212606-5.png
図表6 212606-6.png
図表7 212606-7.png
図表8 212606-8.png
カテゴリ 画像処理

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