タイトル | どこの山が、いつ崩れるか、リアルタイムで予測する |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
阿部 和時 黒川 潮 |
発行年度 | 2003 |
要約 | レーダーアメダス6時間降雨予測情報と、対象流域の地形・土質データ等を使って、今後、6時間後までの間にどこで、いつ表層崩壊が発生するか予測するシステムを開発した。 |
背景・ねらい | 集中豪雨により毎年のように発生する山崩れは、下流域の農山村や公共施設等に多大な被害を与えています。被害を少しでも減少させるために山崩れの発生危険度予測の精度を上げることが社会的、行政的ニーズとなっています。現在、山崩れ発生危険度予測には既往の災害データを用いた統計手法を多く採用していますが、予測結果を短時間で出すことはできません。人的被害を発生させないためには、現在降っている雨や数時間後に降ると予想される雨に対応して、リアルタイムで、いつ、どこで山崩れが発生するかを予測できるシステムが極めて有効と考えられます。 そのために、気象庁が1時間ごとに発表している、今後6時間後までの時間降雨量予測データ(レーダーアメダス6時間降雨予測データ)を使って、山崩れの発生位置と、発生時刻をリアルタイムで予測する、山崩れ危険度予測手法を開発しました。 |
成果の内容・特徴 | 山崩れ危険度予測手法の全体的な内容山崩れ危険度予測手法の全体的な内容を図1に示しました。先ず、山崩れ危険度を求めようとしている対象地域のレーダーアメダス6時間降雨量予測データを、インターネットを使って入手します。このデータと、予め準備しておいた山崩れに密接に関係のある地形、土質、植生データを、山地斜面の安定状態を評価する斜面安定解析モデルに代入して、どこの斜面が、いつ崩れるかを計算します。ここでは、対象地域を一辺が50m四方の区域(グリッドと呼ぶ)に区切り、各グリッドで山崩れが発生するか否かを計算します。計算の結果、山崩れが発生すると判定されたグリッドを対象地域の地図データと重ね合わせて描画します。この地図を見ればどこが危ないかすぐにわかります。斜面安定解析モデルの基本的な仕組み斜面安定解析モデルの基本的な仕組みを図2に示しました。この図は、山地斜面の表層土中における土中水の状態を、斜面の横方向から見て描いています。強い雨が続くと土中水の量は多くなって、表層土が斜面下方に崩れようとする力が大きくなります。この手法では、山崩れの発生を防ぐ土が持っている抵抗力と、土中水の増加により斜面が崩れようとする力を比較して、土の抵抗力の方が大きければ山崩れは発生しない、逆に小さければ山崩れが発生するという判断基準にしました。また、この手法では現在の降雨強度でリアルタイムに山崩れ発生位置が予測できると同時に、1時間先、2時間先、・・・・・、6時間先まで山崩れの発生位置を予測できます。 予測実験結果この手法を用いて、静岡県榛原郡中川根町を流れる大井川支流の榛原川最上流域約500haを対象に、山崩れの危険度予測をしてみました。1時間に100mmの降雨を連続して与え続け、1時間後と3時間後に山崩れが予想される場所を図3に示しました。1時間に100mmの降雨が3時間も続くという状況は、現実的には発生しないような非常に激しい降雨です。計算の結果、1時間後には22箇所(グリッド)で、3時間後には93箇所で山崩れの発生が予測されました。本手法を使えば、豪雨時に周辺の山々が危険な状態になる前に地域住民を安全に、速やかに避難させることができ、人的被害を出すこともなくなると考えています。 本研究は、交付金プロジェクト「集中豪雨によるため池等の災害発生機構の解明と予測技術の開発」、及び林野庁委託費「降雨強度を指標とする山地災害危険地判定手法の開発」により行いました。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
図表6 | |
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