タイトル | マングローブ林の炭素の貯え |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
田淵 隆一 |
発行年度 | 2004 |
要約 | ミクロネシアと東南アジアでマングローブ林の炭素蓄積量と蓄積速度を調べたところ、この林では陸上の森林に負けない大きさ、速さでしかも湿った地下部には泥炭として多量の炭素を貯えていることがわかりました。 |
背景・ねらい | 近年森林には炭素を貯えて大気中の二酸化炭素濃度を減らし、温暖化を抑える役割が強く求められています。湿地林、中でも熱帯~亜熱帯の海岸など潮が満ちれば水に浸かる場所に育つマングローブ林が、炭素を貯めておく機能が高いことが判ってきました。マングローブ林面積は世界で20万平方km弱、熱帯林の1.5%にも足りません。しかし、マングローブ林は泥が深く河や雨から得られる淡水が多いなどの良い条件が揃うと、陸上の森林に負けない速さで成長し炭素を蓄える働きが見直されています。またマングローブ林は頻繁に水に浸かるため、死んだ根も湿った泥の中では分解せず泥炭として多量の炭素を貯えておくことができるのです。この大切なマングローブ林を保全していくため、どのくらいの速さで毎年炭素を貯えているのかを、東南アジアではマレー半島部西岸のタイとマレーシアで、ミクロネシアではポンペイ島で調べています。 |
成果の内容・特徴 | 2つのマングローブ林タイやマレーシアなど東南アジアのマングローブ林は30~40年毎に製炭用に収穫して利用され、天然更新で再生するパターンを繰り返してきました。一方海洋島のポンペイ島では人口が少ないこともあり、マングローブ林はほぼ天然のまま残されてきました。推定した炭素量(ヘクタール当りの立木総重量を炭素に換算した値)は、林のタイプによっても違いますがポンペイ島でおよそ160~300トン、7年~50年程度の比較的若い東南アジアの若い林でおよそ40~290トン程度でした(図1)。また炭素の蓄積速度はポンペイ島で年当りおよそ0~3トン、東南アジアで0~9トン程度でした(図2)。古い林と使われている林森林は成長すると面積当りの本数(立木密度)が減り、林全体の総重量は大きくなっていきます。しかし東南アジアに比べてポンペイ島では同じ立木密度でも何倍も大きな立木総重量であることがわかります。これはこの島の林が長い時間あまり伐られずにいたためです。また古い林では泥炭として貯まった炭素量も高く、ヘクタール当りで2,000トン程度にもなる林があります。泥炭をもたない陸上の熱帯林では、地下部も含めて炭素で500トン程度が最大とされるのと比べて極めて大きいことが明らかになりました。マングローブ林は直接的に沿岸住民の暮らしを支えるだけでなく、このように温暖化抑止にとっても高い価値を持っています。世界で年間約1,000平方kmといわれるマングローブ林の減少を喰い止め、再生させていかなければなりません。本研究は、科学研究費補助金「マングローブ天然林の炭素固定機能および有機物分解機能の評価」による成果です。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
図表5 | ![]() |
図表6 | ![]() |
カテゴリ | 亜熱帯 |