タイトル | 少雪でトドマツが枯れる |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究担当者 |
丸山 温 北尾 光俊 飛田 博順 中井裕一郎 石橋 聡 山口 岳広 |
発行年度 | 2004 |
要約 | 1999年から2002年にかけて、道東のトドマツ人工林に大規模な枯損被害が発生した。調査した結果、土壌深く凍結し早春の時期に蒸散によって樹体が著しく乾燥したことがわかりました。 |
背景・ねらい | 1999年から2002年にかけて、道東地方において樹齢60年以上のトドマツ人工林で大規模な枯損被害が発生しました(写真1)。植栽後十数年程度までの若いトドマツ林では冬季の凍害や乾燥害でこのような被害が発生する場合がありますが、壮齢林で今回のような枯損被害が発生したことは記録にありません。本研究では、被害のメカニズムを明らかにし、被害林分の取り扱いなど対応策を提案することを目的としました。 |
成果の内容・特徴 | 被害の発生北海道支所では、多分野の研究者が調査に参画して原因の究明にあたりました。当初は原因として病虫害が疑われましたが、病気の感染は認められず、虫の侵入跡が少し見られましたが枯れてから後のものでした。幹を切断して内部の状態を調べたところ、水の通り道で通常は湿っているはずの辺材部分がかさかさに乾いており、水が上がっていなかったことがわかりました。この原因として乾燥が考えられますが、被害が発現した初夏は北海道ではまだ涼しく、枯れに結びつくような強い乾燥は考えられません。そこで冬の気象条件に着目してみました。原因は?冬季に氷点下の気温が続く北海道では、毎年のように土壌凍結が発生します。積雪が深いと保温効果で土壌凍結は止まりますが、浅いとどんどん進行します(図1)。2001年と2002年に被害が発生した地域では、被害発生前の冬は特に雪が少なく、深くまで土壌が凍結していたことがわかりました(図2)。土壌が凍結した状態で蒸散が起こると、根から吸水できないため樹体が乾燥し、幹や枝の水が抜けて水上げの機能が低下します。その結果、蒸散が増える初夏に吸水が追いつかなくて枯れが発生したと考えました(図3)。被害が発生した林では20~30年前から急速に成長が低下し、被害発生時は成長がほとんど止まって樹勢がかなり衰えていたことがわかりました。成長が低下すると新しい木部(水の通り道)が形成されないため、水上げの機能が低下します。そこへ土壌凍結による樹体の著しい乾燥が起こったため、水上げ機能が一気に悪化して被害発生に至ったと考えられます。被害林分をどうするか?この地域はもともとナラやカシワの林で、トドマツを植栽するのに適した立地でなかった可能性もあります。被害林分の今後の取り扱いとして、本来この地域に分布していた広葉樹の林に誘導することがまず上げられます。ただし、この方法では成林に長期間を要します。短期間で成林させるために人工植栽を行う場合、ネズミによる食害の問題がありますが、成長が早く冬季に葉を落とすカラマツが無難と思われます。本研究は、交付金プロジェクト「壮齢トドマツ人工林枯損被害の緊急実態調査と原因の解明」による成果です。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
図表5 | ![]() |
図表6 | ![]() |
図表7 | ![]() |
図表8 | ![]() |
カテゴリ | 病害虫 乾燥 凍害 |