- 外来生物にいどむ -(2) 外来哺乳類の分布拡大と対策

タイトル - 外来生物にいどむ -(2) 外来哺乳類の分布拡大と対策
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 林 典子
山田 文雄
宮本 麻子
杉村 乾
発行年度 2004
要約 外来哺乳類タイワンリスの分布拡大予測に基づき、対策の優先地域を選定し、分布拡大の足場となる緑地管理の重要性を提案しました。また、外来マングースによる希少種への捕食影響や、希少種生息地での侵入状況を明らかにし、対策とモニタリングの必要性を提案します。
背景・ねらい わが国に住む105種の哺乳類のうち、約30%が外来種で占められています。2004年6月、本来の生態系に大きな影響や被害をもたらす外来生物に対処するため、「特定外来生物法」が制定され、具体的対策が始まりました。早くから外来哺乳類の影響と対策研究を進めてきた森林総合研究所のは法律策定や現地対策に大きな貢献をしてきました。
成果の内容・特徴

拡大するペット由来のタイワンリス

外国から持ち込まれたペット(愛玩動物)が野生化して定着し、産業や生態系におおきな影響を与えています。タイワンリスもその一つで、中国、台湾、インドシナ半島などに分布していますが、1930年以降日本各地に持ち込まれ、2003年には12箇所で定着が確認されています(図1)。神奈川県南東部では、野生化が始まった1950年代以降、個体数の増加に伴って急激に分布域が拡大していることが明らかになりました(図2)。本種は、森林面積が10ha以上あり、常緑広葉樹が多く、周囲が閑静な田畑で囲まれている環境で生息する可能性が高いようで、現在生息している区域から更に分布を広げていく可能性があります(図3)。特に、在来のニホンリスはじめ鳥類や植物の貴重な生息地である西側の山塊(No.1、2)に侵入すると、在来生態系への影響が危惧されます。
対策として最も重要なのは、西側の山塊への移動経路にあたる相模川流域(No.3)や相模湾岸(No.4)の緑地で駆除を徹底することです。また、市街地の公園や緑地では、下刈りをしたり、植栽間隔を疎らにするなどによって、タイワンリスが分布を拡げる足場とならない環境に変えていくことも有効です。関係行政機関や住民の理解を得ながら、こうした対策を取っていくことが在来種や生態系を守るうえで必要です。

本格的駆除が開始されたマングース

「誤った天敵導入」の代表的事例として、マングース問題があります。マングース(正確にはジャワマングース)はアラビア、インド、中国南部、東南アジアを原産地とする食肉類で、雑食性で環境適応力や繁殖力に優れています。わが国へは、南西諸島に生息する毒蛇ハブ駆除のために、沖縄本島に1910年、奄美大島に1979年ごろに導入されましたが、農業被害や家禽被害を起こしています。われわれの調査から、マングースは昼行性のため夜行性のハブと出会うことはなくハブ駆除には役立たないこと、アマミノクロウサギなどの希少種を襲い、地域的絶滅を起こしていることなどを自動カメラによる生息調査などで明らかにしました(図4)。マングースは希少種の生息地である谷間や山奥などに侵入し、アマミノクロウサギの保育用巣穴などを襲っています(図5)。外来種対策には早期発見、迅速対応が解決のための必須条件です。これまで実施されている駆除方法を改善し、有効な駆除対策を立てるために、一層の継続的なモニタリング調査や駆除対策の研究が必要です。

詳しくは:Miyamoto, A., Tamura, N. Sugimura,K., and Yamada. F.,2004. Global Environmental
Reseach, 8(1): 13-21.Yamada, F. and K. Sugimura. 2004. Global Environmental Reseach,8(2): 117-124.をご覧下さい。
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カテゴリ 繁殖性改善 モニタリング

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