ポプラの環境ストレス関連遺伝子の大規模収集に成功

タイトル ポプラの環境ストレス関連遺伝子の大規模収集に成功
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 楠城 時彦
二村 典宏
西口 満
伊ヶ崎知弘
篠原 健司
発行年度 2004
要約 ポプラの完全長cDNAを世界で初めて大規模収集しました。乾燥や高塩濃度などの環境ストレスに応答する遺伝子が多数含まれおり、樹木の環境ストレス応答機構の解明や環境ストレス耐性樹木の創出への応用が期待されます。
背景・ねらい 樹木の環境ストレス応答機構や耐性機構の解明は、乾燥地の緑化など環境の保全や修復のための基礎研究として重要な課題です。米国を中心とする研究グループは、平成16年9月に、木本植物で初めてポプラの全ゲノムの塩基配列を解読しました。その結果、ゲノム情報をもとに展開されるポストゲノム研究において、ポプラは有望な「モデル樹木」と位置付けられました。しかし、樹木の生理機能を分子レベルで理解するためには、単なる塩基配列の羅列にすぎないゲノム情報だけでは不十分であり、細胞内で機能する遺伝子群の収集と発現解析が必要となります。私たちは、樹木の環境ストレス応答機構や耐性機構の解明を目指して、細胞内で働く遺伝子を反映したcDNAをポプラから大量に収集しました。
成果の内容・特徴

完全長cDNAライブラリーの作製

乾燥、高塩濃度や低温などの環境ストレス処理をしたポプラ(セイヨウハコヤナギ、Populus nigra var. italica)の葉を用い、完全長cDNAライブラリー(図1)を作製しました。完全長cDNAは、遺伝子の機能解析や組換え体の作出にとって有用なバイオリソース(生物資源)です。これまでに植物界では、シロイヌナズナ、イネやヒメツリガネゴケなどの完全長cDNAが収集されています。30,000個以上のポプラcDNAの塩基配列を解析した結果、様々な機能を持つ約4,500種の遺伝子を同定しました(図2)。このような大規模な完全長cDNAの収集は、樹木では世界で初めての報告です。

多様の環境ストレス関連遺伝子の収集

また、ポプラcDNAの中には多数の環境ストレス関連遺伝子が含まれていました。ポプラ完全長cDNAは、ポプラゲノムの正確な解析に有効な情報をもたらすだけでなく、樹木のポストゲノム研究に大きく貢献します。さらに、本研究で得られたポプラの環境ストレス関連遺伝子群は、遺伝子組換えによる環境ストレス耐性樹木の開発や、遺伝子マーカーとして用いることで耐性樹木の選抜などにも利用可能です。
今後は、ポプラの遺伝子コレクションをさらに充実させ、樹木の環境ストレス応答機構や耐性機構を解明する予定です。また、環境ストレス耐性樹木の創出に挑戦し、持続的な地球環境の保全に貢献したいと考えています。

本研究は、交付金プロジェクト「ポプラ完全長cDNAライブラリーコレクションの整備」による成果です。

詳しくは、Nanjo et al. (2004) Plant and Cell Physiology 45(12):1738-1748 をご覧下さい。
図表1 212633-1.gif
図表2 212633-2.gif
カテゴリ 乾燥

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる