タイトル | ヒノキの効率的な個体再生技術の開発 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
丸山エミリオ毅 細井 佳久 石井 克明 |
発行年度 | 2004 |
要約 | 不定胚形成によるヒノキの効率的な個体再生技術を開発しました。この技術では、種子1個から数万本のクローン苗を短期間に得ることが可能で、遺伝子組換えヒノキの作出や有用品種の大量増殖への応用が期待されます。 |
背景・ねらい | 外来遺伝子を導入した細胞から多数の成熟個体をつくりだす技術は、樹木の遺伝子組換えを成功させる要となる重要な技術です。針葉樹ヒノキでは、これまで効率的な個体再生技術はほとんど報告がありませんでした。そこで、基本培地や植物成長調節物質の種類及び濃度の変化、炭素源類やアミノ酸類の濃度、さらに活性炭、浸透圧調節剤やアブシジン酸等の添加の有無により、様々な組織培養条件を検索することで、未熟種子から不定胚(受精によらずに体細胞から生ずる胚、いわば種子の胚に相当する組織)を誘導し、大量のクローンヒノキを再生する技術を開発しました |
成果の内容・特徴 | 未成熟な球果から不定胚、幼木へ研究材料として、ヒノキの中でも特に材質や成長の良い個体(茨城県林業技術センター精英樹)を選びました。この個体から未成熟な状態の球果(図1A)を7月上旬に採取し、表面殺菌した後、無菌的に未熟種子を取り出し、微量の植物ホルモン(ベンジルアミノプリンと2,4-ジクロロ酢酸)を添加した培地で培養しました。すると、活発に増殖する不定胚に分化可能な細胞が得られました(図1B、C)。そこで、この細胞を糖のマルトース、高分子物質の1種ポリエチレングリコール、活性炭、植物ホルモンのアブシジン酸を添加した培地で培養すると、不定胚が形成され、成長していきました(図1D、E、F、G、H)。さらに、成熟した不定胚を、植物ホルモンを添加しない培地で発芽させると、多数のヒノキ幼植物体が再生しました(図1I、J、K、L)。1つの種子から数万本のクローン苗がこの不定胚を経由した個体再生技術では、種子1個から数万本のクローン苗を短期間に得ることが可能です。再生したヒノキは苗畑で健全に育ちました。なお、不定胚形成細胞を液体窒素中(-196℃)に保存することで、分化能力を保持させたまま低温保存する技術も開発しました。この不定胚を経由した個体再生系は、ヒノキの遺伝子組換えの基盤技術として、花粉アレルゲンを生産しないヒノキや、病虫害に強いヒノキ等の作出への応用が期待されます。また、ヒノキ有用品種の大量増殖にも利用できます。一方、不定胚形成細胞の低温保存技術の開発は、長期にわたる森林遺伝資源の保存と供給を可能にします。 詳しくは、Maruyama, E. et al. (2005) Journal of Forest Research 10(1):73-77 をご覧下さい。 |
図表1 | ![]() |
カテゴリ | 病害虫 遺伝資源 くり クローン苗 品種 |