タイトル | 森林の有機物成分の簡単なはかり方-近赤外分光分析法- |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究担当者 |
小野 賢二 平出 政和 甘利 雅拡 |
発行年度 | 2004 |
要約 | 食品、農業、畜産等の分野で用いられてきた近赤外分光分析法を森林の有機物分析に応用し、葉や堆積有機物の分解中のリグニンやホロセルロース等森林有機物を簡便に把握することが可能になりました。 |
背景・ねらい | 植物の体は、リグニン、セルロース、タンパク質、樹脂などさまざまな有機物でできています。これまでの研究によって、枯れて林床に落ちた葉や枝(これらは一般にリターと言います。)の分解には、リターの化学成分が影響することが明らかになっています。そのため、リターが分解するにつれて、有機物がどのように変化していくのか、多くの研究者が注目し研究しています。従来、有機物の成分分析には、試料を有機溶媒や酸で処理し、有機物成分を順番に抽出する分析法が用いられてきました。しかし、この方法は、実験操作が煩雑で、多量の薬品を使い、大変時間がかかるものでした。そこで、私たちは、短い時間でたくさんの試料を簡便で正確に分析できる方法として近赤外分光分析法(以下、「NIR」という。)に着目し、その方法が森林の有機物成分の分析に導入できるかどうかを検討しました。 |
成果の内容・特徴 | 近赤外分光分析法とは農業、食品、医療などの分野では、物質に含まれる化学成分を簡単に測るためにNIRを用いています。NIRはメロンやリンゴなどの果物の糖度を非破壊的に測る時やBSEの原因物質である肉骨粉が畜産飼料に混入していないか調べる時などに使われています。有機物を形作っているそれぞれ分子は近赤外光のうちある特定の波長の光を吸収する性質を持っています。NIRはこのような有機物の性質を利用して成分量を調べる方法です。私たちは図1のような近赤外分光分析装置を用いて測定を行いました。リター有機物への応用いろいろな木の葉に対して近赤外光を照射し、近赤外反射スペクトルを測定します(図2)。得られた近赤外スペクトルと従来用いられてきた分析法から求めたいろいろな有機物成分の濃度とを比較、解析し、各成分に特異的な波長を選定して定量式を作りました。また、定量式より求めたNIR測定値と従来法による化学分析値を比較し、各成分に対する分析精度を調べました。図3はリグニン成分に対する比較の結果です。NIR測定値と従来法による値はよく一致していました。リグニンに限らずいろいろな森林の有機物成分について、NIR測定値と化学分析値は高い相関性を示し、また誤差も小さいことから、NIRは高い精度で迅速に成分量を測定できることが明らかとなりました。NIRは(1)再現性が高い、(2)低エネルギーの光を用いるため試料を変性させず、他の分析に再利用可能、(3)薬品を使用しないため有害な廃液が出ない、(4)固体、粉体、液体、溶液など多様な試料に適用可能、(5)迅速、簡便、正確に多成分を同時に分析可能、などの優れた特徴を持っています。今後、NIRは実験操作が煩雑だった従来法に代わって、森林の有機物成分を簡単に測定する方法になり、リターの分解過程の解明などに役立つものと考えられます。 詳しくは Ono, K., Hiraide, M., and Amari, M. (2003) Journal of Forest Research 8(3):191-198. をご覧下さい。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
図表5 | ![]() |
図表6 | ![]() |
カテゴリ | メロン りんご |