カシノナガキクイムシ集合フェロモンの構造解明 -ナラ類集団枯死の回避を目指して-

タイトル カシノナガキクイムシ集合フェロモンの構造解明 -ナラ類集団枯死の回避を目指して-
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 中島 忠一
所 雅彦
衣浦 晴生
齊藤 正一
小林 正秀
発行年度 2004
要約 ナラ類を集団で枯らすカシノナガキクイムシが、寄主の幹に集団で穿入する際に用いている集合フェロモンの化学構造を決定し、野外での誘引性を確認しました。枯死を減らすための利用法開発が期待されます。
背景・ねらい ミズナラなどが次々に枯れてゆくナラ類の集団枯死は、1980年以降2004年までに1府17県(図1)で確認されています。この被害はカシノナガキクイムシ(以下カシナガ、図2)という昆虫が病原菌を樹から樹へ伝染させることによって起こります。枯れた木で増殖した大量のカシナガがさらに周辺のナラ類へ拡がっていくことで集団的な枯死被害が生じるのです。ここ数年急激に被害が拡大しており(図3)、ミズナラ資源が無くなってしまうことが危惧されています。
多数のカシナガがミズナラなどに集中的に孔を開けて樹幹に入り込み繁殖のための長い孔道を作ります。たくさんの仲間を集めることから、集合フェロモンを利用していることが推察されました。その集合フェロモンを上手く利用すればミズナラの枯死を減少させることが可能になると考え、集合フェロモンの存在確認とその化学構造を明らかにする研究を行いました。
成果の内容・特徴

雄が出す集合フェロモン

カシナガの雄は、雌より先に寄主となる樹木の幹に穿入して数センチだけの孔道を掘ります。そして孔道を掘るときに出る木屑を入り口付近に堆積させるように外に押し出します。その時に腹部末端から液体を分泌し木屑に染みこませると、それにひかれて雌雄のカシナガがたくさん木に集まってきます。このような行動から、雄が作った集合フェロモンを分泌液として放出していると推察しました。

集合フェロモンの化学構造

雄の分泌液が染みこんだ木屑から揮発成分を集めて分析したところ、複数の成分が検出されました。昆虫は触角にある受容器官を使って揮発成分を感じます。どの成分をカシナガが感じているかを明らかにするため、触角の受容器の反応を電気生理学的に調べた(図4)ところ、いちばん量の多い成分が触角で受容される情報伝達物質であることが明らかになりました(図5)。さらにその化学構造は、モノテルペンアルコールの一種であるtrans-1-methyl-4-methylethyl-2-cyclohexen-1-ol(図6)と決定されました。

合成した集合フェロモンの野外誘引試験

化学構造を決定した物質が実際にカシナガを誘引するかどうかを確認するため、合成化合物を誘引源とした野外捕獲試験を山形県と京都府の被害林において実施しました。その結果、雌雄の成虫が多数誘引されたので、雄が作っているこの化合物は雌だけを集める性フェロモンではなく、集合フェロモンであることが明らかになりました。

この研究により集合フェロモンの化学構造が決定され、その物質がカシナガを誘引できることが明らかになりました。今後は集合フェロモンを効果的に利用して、カシナガを大量に集めて防除するなど、ナラ類の集団枯死被害を減らす技術の開発に向けた研究を行います。

本研究は一般研究費「集団的萎凋病の対策技術の開発」による成果です。

なお集合フェロモンの化学構造と機能に関する成果については特許出願中です。
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カテゴリ 病害虫 性フェロモン 繁殖性改善 フェロモン 防除

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