京都議定書*に対応した国家森林資源データベースの開発

タイトル 京都議定書*に対応した国家森林資源データベースの開発
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 松本 光朗
粟屋 善雄
家原 敏郎
高橋 正通
発行年度 2006
要約 京都議定書の第一約束期間(2008-2012年)に向けて、議定書に定められた森林の吸収量を科学的に算定・報告する手法の開発とともに、それを実行するための国家森林資源データベースを開発しました。
背景・ねらい 地球温暖化の緩和を目的とし、先進国各国に温室効果ガス*の削減目標を示した京都議定書は、2008~2012年の第一約束期間において1990年を基準にして6%の排出削減という目標を日本に示しました。その一方、森林による温暖化効果ガスの吸収を考慮し、1990年以降に行われた新規植林・再植林による吸収量や、1990年以降に森林経営活動がなされた森林の吸収量に限って、3.8%相当量まで排出削減目標達成に利用できることとなりました。このような背景から、森林総合研究所では京都議定書に向けた森林吸収量の算定・報告手法の開発を行うとともに、それを実行するための国家森林資源データベースを開発しました。
成果の内容・特徴

我が国の森林吸収量の算定・報告手法の開発

京都議定書に対応した我が国の森林の吸収量の算定・報告手法を検討し、以下のような算定・報告手法を開発しました。
  1. 対象の森林を、最低樹高5m、最低樹冠被覆率30%、最低面積0.3ha、最小幅20mと定義しました。
  2. 1990年以降の新規植林・再植林・森林減少面積は、オルソフォト*や高解像度衛星画像を用いた500mグリッド(格子)の抽出調査により把握します。
  3. 森林経営活動は、育成林では「植栽など更新作業、下刈りなど保育作業、間伐および主伐」とし、天然生林では「法令等に基づく伐採規制など保護・保全措置」と定義しました。1990年以降に、これらの活動が実施された森林が算定の対象となります。
  4. 吸収量は2008年~12年の炭素蓄積の変化量から推定することとし、バイオマス拡大係数、容積密度など炭素量推定に必要な係数を明らかにしました。
  5. 枯死木、リター、土壌の炭素量の推定については、日本用に調整したセンチュリーモデル*を用います。
  6. 不確実性の評価や算定値の検証を重視した設計としました。

国家森林資源データベースの開発

上記の要件を満たし我が国の森林の吸収量を算定・報告を実行するシステムとして、国家森林資源データベースを開発しました(図1)。国家森林資源データベースは、図2のように、森林簿や森林計画基本図など行政情報を基礎とし、その蓄積量・成長量の情報を森林資源モニタリング調査(林野庁)などの実測調査によりクロスチェックし、位置情報をオルソフォトや衛星画像でクロスチェックする、といった検証が可能な構造のもとに設計されています。このデータベースは、森林簿や森林計画図、オルソフォトなど日本の森林をカバーする多様なデータを搭載するとともに、それらの解析機能を持っています(表1、図3)。

以上の成果は、2006年8月に政府が国際連合気候変動枠組み条約事務局に提出した「気候変動枠組み条約に基づくインベントリ報告書」および「京都議定書に基づく割当量に関する報告書」に反映されました。さらに、ここで開発された方法は、京都議定書第一約束期間(2008-12年)における日本の吸収量の算定方法として採用されることになり、国家森林資源データベースが実際の算定・報告に用いられる予定です。

本研究は、環境省地域環境研究総合推進費「京都議定書吸収源としての森林機能評価に関する研究」、および林野庁受託費「森林吸収量報告・検証体制緊急整備対策事業」による成果です。

*京都議定書;地球温暖化を緩和するため、各国の温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化窒素、代替フロン等の6種のガス)の削減目標を定めた世界的な枠組みです。1997年の京都会議で合意されたため京都議定書と呼ばれます。
*オルソフォト;空中写真を地図と同じ正射投影に作り変えたものです。
*センチュリーモデル;米国コロラド州立大学が開発した、土壌を含めた森林の炭素循環を表した数理モデル。これを機構や樹種、成長などの計数を調整し、日本で利用できるようにしました。
図表1 212671-1.jpg
図表2 212671-2.gif
図表3 212671-3.gif
図表4 212671-4.jpg
カテゴリ 経営管理 炭素循環 データベース 低樹高 モニタリング

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