タイトル | タケの地上部現存量*を簡易に推定する |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究担当者 |
奥田 史郎 鳥居 厚志 伊藤 武治 上村 巧 佐々木 達也 伊藤 崇之 木村 光男 豊田 信行 山田 倫章 伊藤 孝美 竹内 郁雄 |
発行年度 | 2006 |
要約 | モウソウチク林の放置状態を回避する一つの手段として、バイオ燃料等の大規模な利用開発の取り組みが始まっています。そのために、放置状態にあるモウソウチク林の地上部現存量を簡易に推定する方法を開発しました。 |
背景・ねらい | モウソウチクは、タケ類の中では日本で最も分布範囲の広い外来の植物種です。しかしかつて筍や竹材などの生産が行われていた竹林は、輸入品の急増や代替資材の普及により放置される例が多くなりました。その結果、放置竹林*では多数の枯れた竹が乱立して見苦しいだけでなく、周辺へ侵入拡大して他の植生を脅かしており、伐採などの対策は急務です。ただ、伐採しても利用が難しいために、その多くは焼却され、いかにも「もったいない」状況でした。そこで、バイオマス熱利用など循環的で大規模な新たな利用法を開発し放置状態を回避する試みが始まりました(図1)。しかし竹林を大規模に伐採するような利用法は従来なかったので、放置竹林の単位面積あたりの資源量がどのくらいなのか、ごく基本的な数値さえ不明でした。そこで、放置竹林の資源量を簡易に推定する方法が求められていました。 |
成果の内容・特徴 | 推定方法モウソウチクの生物資源として利用可能な部位は、地上部の植物体全体にあたり、その重量は地上部現存量(稈枝葉の重さの合計)に相当します。モウソウチク林では、これまでタケノコ生産などのために本数調整をした管理竹林*のデータしかなく、乾燥重量で最大100トン(1haあたり、以下同じ)というものでした。ここでは、管理をしなくなった放置竹林を資源利用の対象にしていて、そこにある面積当たりの現存量とその範囲を推定するために、西日本を中心に各地に調査地を設けて多点の調査を行いました。各調査地では、地上部現存量を推定するために、それぞれサンプル個体の測定値から相対成長式*(直径や高さと重さとの関係を示す式、図2)を求めて、林分ごとの地上部現存量を推定しました。 現存量推定値モウソウチクは中空ですが、他の植物と同様に稈の太さ(胸高直径)と重量には一定の関係がみられたので、これを元に個体別の重さを推定し、合算することで一定の土地面積当たりの現存量を推定しました。一般的に、重量の推定には樹高も因子として用いますが、多地点での測定結果から樹高と直径の関係に一定の傾向が見られたので(図3)、測定の簡易な直径値だけで推定しました。その結果、放置竹林の現存量は100トンから最大約300トンまでとかなりの広い範囲の推定値でしたが、多くの竹林は150~250トンの範囲でした。これは、壮齢の針葉樹人工林に匹敵する量です。地上部現存量を最も良く反映した指標は林分の胸高断面積合計*(図4)で、稈本数密度はそれに比べるとバラツキが大きく混み具合を反映する指標としては適当ではないようです。この様に、混み具合の目安として竹林の稈の直径を測り胸高断面積合計を求めれば、おおよその現存量が推定できることがわかりました。 本研究は、農林水産省高度化事業「タケ資源の持続的利用のための竹林管理・供給システムの開発」による成果です。 *現存量;ある一定面積の土地に存在する生物量。ここでは、地上部(地面より上にある)のタケの総乾燥重量のことです。 *放置竹林、管理竹林;タケノコ生産目的などの管理竹林では、稈密度(本数)を調整して林内に良く光が入るほどに空かします。一方、手入れをしなくなった放置竹林では稈密度が増加し、林内が暗くなり枯れた稈が多数みられるほどに混んできます。 *相対成長式;生物個体の一部分の成長率が個体全体の成長率に比例するという関係を示す式。ここでは、胸高直径(1.3mの高さの稈の太さ)から全体重量を推定するために用いています。 *胸高断面積合計;ある一定面積の土地において、幹の胸高(地面より1.3mの高さ)における水平断面積をすべての個体の分足し合わせたものです。一般的に、樹木では混み具合の指標となります。タケでは便宜的に稈の中空部分を含んで計算しているので数値はほかの樹木と比べると大きめです。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 乾燥 シカ たけのこ |