火災に強い集成材をつくる

タイトル 火災に強い集成材をつくる
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 原田 寿郎
上川 大輔
服部 順昭
安藤 恵介
発行年度 2006
要約 4階建て以上の建物を木造でつくるには、その構造を維持するはりや柱は、火災にあった時に燃え尽きてしまわない材料でなければなりません。難燃薬剤を注入した木材を積層することで、火災にあっても燃え止る耐火性能をもった集成材を開発しました。
背景・ねらい 4階建て以上の建物の柱や梁などは、火災時にもその構造を維持するだけの強度をもった耐火構造でなければなりません。耐火構造の建物としては鉄筋コンクリート造や鉄骨造が一般的ですが、建築基準法によって所定の性能が確認されれば、木造でも可能です。しかし、材料そのものが燃える木質系材料の場合は、耐火加熱試験で壊れないという性能のほかに、自然に鎮火して材料自身が燃え止まらなければならず、このことが、木質系耐火構造の開発を難しいものにしています。木材の表面に石こうボードのような無機材料を張れば、柱や梁を燃え止まらせることができますが、この研究では、1時間以上の耐火性能を確保した、全て木材からなる耐火構造の柱や、梁の開発を目指しています。
成果の内容・特徴

無処理の集成材は燃え止まらない

断面の大きな集成材の梁や柱は、火災にあっても周囲に形成される炭化層の断熱効果で、内部温度が急には上昇せず、十分な強度が維持されますので、速やかに消防活動を行えば壊れません。一定規模以下の体育館などに大断面の集成材が使えるのはこうした性能のおかげです。しかし、建築基準法による4階建ての木造建築物に必要とされる耐火構造に使用する柱や梁は、耐火加熱試験において、945℃で1時間燃焼させた後、そのまま放置しても壊れず、また燃え続けて灰になってしまわないことが確認されなくてはなりません。特別な処理をしない集成材は、十分な断面があれば1時間の加熱で壊れることはありませんが、消火しなければ燃え続けますので、耐火構造の材料とはならないのです(写真2)。

どのように集成材を燃え止まらせるか

燃え止まり層として、難燃化した木材を集成材内部にロの字に配置することが有効であると考え、燃え止まり層により多くの難燃薬剤が含浸されるよう工夫した集成材を製造し、その耐火加熱試験を行いました(図1)。木材への薬剤注入のし易さは樹種や木材の部位によって違います。カラマツのような薬剤を注入しにくい木材であっても、必要とする場所により多くの難燃薬剤をより確実に注入するためには、燃え止まり層に当る部分にCO2レーザを用いて小さな穴を開けることが有効でした。

耐火加熱試験で燃え止まりを確認

難燃薬剤を注入したカラマツやスギの集成材の柱(断面350m×350mm、長さ1000mm、写真1)を耐火加熱試験炉で1時間燃焼させ、その後炉内に放置したところ、表面から約40~50mmの深さで炭化の進行が燃え止まりました(写真3)。燃え止まった集成材の内部温度を分析したところ、加熱終了直後は無処理と差が見られないものの、炭化の進行は加熱終了後2時間で止まり、中心部分の温度は100℃まで上昇した後、下降したことがわかりました(図2)。

本研究は、交付金プロジェクト「スギ等地域材を用いた構造用新材料の開発と評価」による成果です。

なお、開発した耐火集成材については特許出願中です。
図表1 212685-1.jpg
図表2 212685-2.jpg
図表3 212685-3.jpg
図表4 212685-4.jpg
図表5 212685-5.jpg
カテゴリ 薬剤

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